2019年12月04日 公開
2022年11月02日 更新
※画像はイメージです。
習近平が打ち出した海の新しいシルクロードというのは、現在のアメリカ海軍の世界戦略を真似た海軍力による中国本土防衛計画である。海のシルクロードとは、すなわちシーレーンの確保である。
習近平はどのようにしてこのシーレーンを確保しようとしているのか。はたしてそれは、有効な戦略なのか。ハドソン研究所首席研究員の日高義樹氏が分析する──。
※本稿は、日高義樹著『アメリカは中国を破産させる』より、一部抜粋・編集したものです。
習近平は世界地図に勝手に線を書き入れて、第1次防衛ライン、第2次防衛ラインなどと名付けている。そして空母10隻と300隻を超す第一線の海上艦艇、79隻の潜水艦で1万数千キロに及ぶシーレーンを確保しようとしているが、具体的な説明はまったくなされていない。
そもそも世界地図の上に勝手に引いた習近平の2本の線は、いったい何を意味しているのか。
習近平からすれば、ここからは入ってはならない、という防衛線ということになるが、どのようなやり方で、あるいはどのような力を行使して、海上の防衛ラインなるものを設置しようとしているのか、まったく説明はない。
私はアメリカ第7艦隊の空母機動艦隊に同乗し、幾度となくアメリカ海軍の軍事行動を見てきた。アメリカ第7艦隊の行動の中心になっているのは空母機動艦隊であり、それを支援する潜水艦隊である。
アメリカ第7艦隊が2隻ないし3隻の空母を同時に動かし、3つの機動艦隊と合わせて10隻以上の艦艇が合同作戦をとることは珍しくない。
その際、もっとも重要になるのが、通信衛星と監視衛星によるコミュニケーションである。太平洋に展開するアメリカ艦隊は衛星の力がなければ、ほとんど行動することができないと言ってもよい。
アメリカ第7艦隊はそういった衛星ネットワークを使って組織的な海上行動を続けながら、衛星に対する攻撃とその防衛に厳重な注意を払っていた。私が親しくしていた太平洋艦隊司令官、のちに海軍総司令官になったラフェッド提督が私にこう言ったことがある。
「衛星を介したネットワークがなければ、第7艦隊はまったく行動をすることができない」
第7艦隊の大規模な演習を何度か取材し、艦艇や海兵隊、太平洋空軍との作戦会議を旗艦「ブルーリッジ」で参観したが、会議には衛星ネットワークを使って、ペンタゴンの統合参謀本部やホワイトハウスのシチュエーションルームからも、国防長官や安全保障担当補佐官が参加していた。
このような複雑な仕組みを中国海軍が習得するには、長い時間がかかる。とくに、数十機にのぼる超高速の艦載機を300キロ先の攻撃地点まで運び、再び安全に収容するためには、まさに水も漏らさぬネットワークの緊密な協力が必要となる。
更新:11月24日 00:05