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「“復興五輪”の理念だけは忘れないで」 震災から10年、俳優・渡辺謙の願い

2021年03月11日 公開
2022年10月14日 更新

渡辺謙(俳優)

 

「復興五輪」の理念はどこへいったのか

東京電力福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長を僕が演じた映画『Fukushima 50』では、2020年東京五輪・パラリンピックの聖火リレーが福島県からスタートする描写があります。

しかし、コロナという現実がそれをあっけなく覆してしまった。東京五輪・パラが一年延期になった際、「復興五輪の理念はどこへいったのか」という議論が起こりました。

しかし現在(2月下旬)は、それ以前に開催できるか否かが懸念されている状況です。かつて1940年夏に開催予定だった東京五輪は、日中戦争の影響で実現せずに「幻の五輪」となりました。そしていま我々は、戦争からパンデミックにかたちを変えた世界的危機に直面している。

僕は、可能であれば開催を望む立場です。しかしワクチンの普及や感染の収束が不透明ななかで、そもそも選手の皆さんが安心して競技を行なえるのか。日本とは季節が反対の南半球の国からも選手が訪れるとすれば、「夏だから大丈夫だろう」と楽観することはできない。

開催の可否は、僕に見通すことはできません。ただし、日本人には、もともと掲げていた「復興五輪」の理念だけは忘れてほしくない。震災から10年が経ったいまも、必死でもがいている人たちがいます。

彼らが強調するのは、「震災や自分たちの存在を決して忘れてほしくない」という点に尽きます。ふとしたときに、被災地を思い出してほしい。

決して大きな貢献でなくとも、「福島産のお米を食べてみよう」とか「今日は宮城で獲れた魚を買ってみよう」といったささやかな行動でいい。微力ですが、僕はこれからも被災地に寄り添い、繋がり続けていきたいと思います。

 

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