2021年02月17日 公開
2022年10月20日 更新
無論、これはあくまで理論上の話にすぎないし、3・11という特殊な状況だからこそ起こったことだともいえる。SNSにもいろいろな種類・性質があり、人びとを助けてきた効用、とくに災害時に大きな成果を出してきたことも疑いようはない。
しかし、その性質を熟知したうえで、民主的な議論の場をハッキングし、言論誘導・弾圧を行なうような戦略を立てる悪知恵を働かせる者が生まれかねない状況があることは指摘せざるをえない。
ここにおいて、現代の政治・社会を動かす要因として「シャープパワー」がより重要になっていることをあらためて意識すべきだ。
シャープパワーとは、軍事力・経済力などのハードパワーでも、文化的魅力をベースとしたソフトパワーでもない形で、敵対する勢力を弱らせ、統制する方法として米国のシンクタンク「全米民主主義基金」が名指した概念だ。
ロシアがフェイクニュースを用いて、米国選挙に介入した疑惑が象徴的である。民主主義を前提とする国の議論を混乱させ、誘導することを通して内政・社会に打撃を与える方法であり、軍やカネが動くハードでもなく、民衆の好意・共感が動くソフトでもなく、言葉を動かし静かに鋭く思惑を強制する。
中国も関係を深めたい国に対して、一方には経済のアメを、他方には言論の統制というムチを見せながらシャープパワーを駆使しようとしているともいわれる。
しかし、そういう国家間の関係の問題のみならず、さまざまな場にこのシャープパワーを巡る闘争の爪痕はすでに見えてきているし、これからもますます現れてくることになるだろう。
更新:11月22日 00:05