2020年01月17日 公開
2022年03月04日 更新
覇権国アメリカはこれまで圧倒的な軍事力と経済力を有してきたが、それと表裏一体の関係として常に世論・文化・情報でも主権を有してきた。
ところが現在、ロシアが情報戦略によってアメリカに激しく攻撃を加えており、アメリカは国際的な地位を失いつつある。その背景には露プーチンが着々と準備してきた国際テレビ局「RT」の存在があった。
学習院女子大石澤教授が新著『アメリカ 情報・文化支配の終焉』にてロシアのメディア戦略とアメリカの自壊を示している。ここではその一節を紹介する。
※本稿は石澤靖治著『アメリカ 情報・文化支配の終焉』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです
ロシアはアメリカのCNNとイギリスのBBCに対抗すべく、2005年12月10日に英語による国際報道テレビ局「ロシア・トゥデイ」を開局させた。
実質はロシアの国営メディアであり、後に頭文字をとって、局の名前を「RT」と変えた。
その理由はRT自身が明らかにしているが、「ロシア・トゥデイ」だと「ロシアのテレビ局」というイメージが強いが、RTとするとそれがぼやけて、視聴者にロシアによる偏向報道と見られるのを軽減することを狙ったのだという。
内容も変えた。ロシア・トゥデイではロシアの情報を世界に提供することを中心としていたが、あまり視聴者が増えなかった。そこでRTに模様替えすると同時に、国際ニュース全般を対象にした国際テレビ局にしたのである。
RTは、なかでもSNSが戦略的な意味をもつと位置付けた。
それはオフィシャルなメディアであるテレビであれば、監督当局から何らかの規制を受けるが、ネットにおけるSNSであればそうした規制を免れることができるうえに、ネット上のすべての受け手に情報を広められるからである。
そこでRTではテレビのキャスターにSNSのアカウントをもたせた。そして、そのアカウントを通じた場合にはテレビでは許されないことも発信できる。
つまり国際テレビ局としてのRTを窓口として、そこからSNSで過激な言論を拡散していくことが可能なのである。RTの成功で自信を深めたプーチンにとっては、冷戦時代にラジオでアメリカに敗れた借りを返す絶好の機会でもあった。
更新:11月22日 00:05