2020年10月12日 公開
2020年10月12日 更新
震災、豪雨災害、パンデミック――。「マスメディアは行政の対応の不十分さだけではなく、“何が前進したのか”をまず明らかにすべき」。そう訴えるのは、阪神・淡路大震災で被災し、昨年秋の豪雨災害や今回のコロナ対応で首長として陣頭指揮を執った熊谷俊人千葉市長だ。若き敏腕市長が、マスメディアの役割や、国民の政治家への向き合い方を語る。
※本稿は『Voice』2020年10月号より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:Voice編集部(中西史也) 写真:吉田和本
――新型コロナ禍により、政治家のリーダーシップに注目が集まりました。国民が政治家の発言や政策を判断するうえで気をつけるべきことはありますか。
【熊谷】「その政策が何のために行なわれているのか」という目線をブレないようにすることです。千葉市はコロナ対応において、分母(検査数)によって尺度が変わる1日の陽性者数ではなく、医療提供体制が保たれているか否かを何よりも重視しています。
日本にはすでにウイルスが流入しており、もはや感染の完全な封じ込めは叶いません。ならば一定の感染者が出ても社会が成り立つ政策を遂行するのが筋道でしょう。
ワクチンや治療薬に過度に期待するのもウイルスの根絶を楽観視する発想で、現実に即していないといえます。
――先行きが見通せないいま、国民が力強い政策を支持するのはある意味では仕方がないでしょう。
【熊谷】そのとおりで、危機時にハンマー(感染を抑える政策)を握る指導者のほうが評価されるのは人間心理として当然です。肯定せざるをえない。
しかしその事実から下手に距離を置いて世論と乖離しては、進めたい政策が結局できなくなってしまう。国民の信頼を勝ち取るためのコミュニケーションを怠らず、ハンマーを無理に選択肢から外さないうえで、リーダーシップを示すことが重要です。
一方で、実際には科学的根拠に基づいた現実的な政策を断行するバランス感覚をもつべきです。これはコロナ禍のような有事に限らず、これからの政治家が備えるべき資質かもしれない。
表では力強いメッセージを発信し、裏では実務的な政策を粛々と進める。いうなれば「明るい中庸」に根差した姿勢が、現代民主主義時代の指導者には求められると思います。
更新:11月23日 00:05