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「メディアは“何が前進したのか”を明らかにすべき」 コロナ対応に当たる千葉市長の訴え

2020年10月12日 公開
2020年10月12日 更新

熊谷俊人(千葉市長)

歴史に対して真摯に向き合う

――市長は昨年10月に千葉県を襲った豪雨災害後の本誌(『Voice』2020年1月号)のインタビューで、「マスメディアは、行政の対応が不十分だった部分だけでなく、機能した部分も伝えるべき」と指摘されています。コロナ禍を経て、考えに変化はありますか。

【熊谷】当時もいまも、メディアに期待することは、社会として「何が前進したのか」をまず明らかにしてほしいということです。

私が阪神・淡路大震災や昨秋の豪雨災害を経験して感じるのは、日本は災害のたびに危機管理の面では間違いなく成長していること。

尊い人命を犠牲にしたことは決して忘れてはなりませんが、少なくとも社会が前進している事実も報道するべきではないでしょうか。

今回はどの部分がうまくいって、どこが不十分だったのか、そして次はどうするべきなのか。いま必要なのは、建設的な批評と次につながる提言です。

また、危機が落ち着いたときにはぜひとも客観的な検証をしていただきたい。福島第一原発事故について、放射線量の基準は適切だったのか、除染はどこまで行なう必要があったのか、いまだに詳細な検証がなされているとは思えません。

3.11後、たとえば千葉県では柏市が放射線量のホットスポット(危険な場所)と見なされました。しかし同市が本当にホットスポットといえるほど危険だったのか。

その後、柏市を含む東葛地域では、子どもたちを放射能から守るとの理由で学校の表土を全面的に撤去しました。

しかし同地域の放射線量は震災後、0.3~0.5マイクロシーベルト程度であり、国の撤去基準である1マイクロシーベルトを全市が下回っていた。

当時は保護者の不安や各党の政治的思惑が働き、東葛地域全域の学校で表土を削るに至ったわけです。その作業にかけた時間と予算はいかほどだったのか、マスメディアのみならず、政官学を含めて検証する必要があります。

――つまりは、日本人の「歴史」への向き合い方が問われている、ともいえます。

【熊谷】誰が良かった・悪かったと個人を断罪するのでは、成長の糧になりません。私たちは「次はもっと賢くやろう」と前に進む意識をもつべきなのです。

そのためには、行政はつねに情報をオープンにするなど、歴史に対する真摯な態度が求められます。

次代の日本をもう一歩前進させるためには、いまバトンをこの手にもつわれわれが責任を果たさなければならない。

ウィズ・コロナを乗り越えてポスト・コロナをどう生きていくかは、現在のわれわれの手にかかっているのです。

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