2020年09月12日 公開
2020年09月14日 更新
小説すばる新人賞を史上最年少で受賞し、現在は京都大学に在学する作家・青羽悠さんが今夏、著書『凪(なぎ)に溺れる』(PHP研究所)を上梓した。二作目となる今作で青羽さんは何を描き、訴えたかったのか。執筆時の秘話と共に話を聞いた。
※本稿は『Voice』2020年10月号より、一部を抜粋編集したものです。
聞き手:Voice編集部(中西史也)
――本書『凪に溺れる』(PHP研究所)は、早逝した天才ミュージシャン・霧野十太を取り巻く六人の苦悩や希望を描く青春小説です。夢と現実の狭間でもがく登場人物それぞれが十太に惹き付けられ、「救い」を求める物語。本作を書くにあたり、どのような想いがあったのでしょうか。
【青羽】 音楽の話を書きたい、とずっと思っていました。もともと音楽に対する憧れがあって、曲を聴くと「何かすごいことが起きるのではないか」と予感する気持ちになることがあった。
自分は楽曲を演奏できるわけではないけれど、この高ぶる感情を小説にできないか。ずっとそう考えていたんです。
一作目の『星に願いを、そして手を。』(集英社)で小説すばる新人賞をいただき、作家としての道を歩み始めたとき、夢を叶えた喜びと同時に、将来に対する大きな期待が消えてしまうような感覚を抱きました。
何かを得ると、何かが失われる。その感覚を本作では膨らませて表現したいと思い、言葉を紡ぎました。
――小説すばる新人賞を史上最年少で受賞されてからの執筆ということで、プレッシャーはありましたか。
【青羽】 率直にいえば、自分の作家としての在り方や今後の人生を考えたとき、どう書いていけばいいのかわからなくなることもありましたね。
一作目の執筆は高校時代でしたが、当時は周りからの評価は二の次で、極端な話、「自分が面白いと感じればいい」とさえ思っていた。
ただ、二作目となる今回は自ずと一作目と比較される。賞を受賞したことで、世間から厳しい目でみられることもわかっていた。執筆中は「自分は本当に作家として生きていけるのか」と自問自答する期間でもありました。
でも、難しいことばかりを考えていてもしょうがない。一周回って、「頭に浮かんだテーマで自分なりに書くしかない」と開き直ることができました。
更新:11月22日 00:05