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完全に行き詰まった中国経済…世界から敵視される“不法と無法な行動”

2020年09月01日 公開
2024年12月16日 更新

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)

日高義樹

問題はコロナではない、中国なのだ――。米国分析で日本最長のキャリアを誇る日高義樹氏は、新著『米中時代の終焉』にて、国際観光バブルの崩壊と中国政治・経済の衰退の隠された関係を明らかにしている。本稿ではその一節を紹介する。

※本稿は、『米中時代の終焉』(PHP新書)の内容を一部抜粋・編集したものです。

 

19世紀ヨーロッパの雰囲気が乱雑な盛り場に 

1980年代の終わり、まだNHKで仕事をしている頃、NATO軍の取材のあいだに見つけたのは、毎年夏になるとモナコで開かれる花火大会だった。モナコというのはフランスのマルセイユから東へ200キロあまりの小さな王国で、アメリカの美人女優グレース・ケリーが国王と結婚したため、世界の注目を浴びた。

ここで夏になると世界各国が参加して花火のコンテストが開かれていた。花火で世界に知られている日本、ドイツ、アメリカ、ブラジル、中国といった国が競って花火を打ち上げ、優劣を競った。アメリカ軍の広報関係者に紹介されたのがきっかけで、何度か見物に出かけた。

モナコは正確に言えばフランスの地中海沿岸コート・ダジュールとイタリアの国境近くにある小さな都市国家で、地中海の一部であるリグリア海につながっている。静かな内海を挟んで、両方からなだらかな丘が続いている景勝の地である。

港にはモナコ国王の所有する有名なヨットが係留され、湾の中央に作られた花火発射場から花火が打ち上げられるのが恒例であった。最上の観覧席はその港を見下ろす丘の上に作られた瀟洒なホテルのレストランであった。

花火大会が開かれる時には、特別にレストランの外にテーブルがしつらえられ、多くの客で賑わっていたが、ヨーロッパらしい気品に満ちた、優雅な食事ができる程度の騒ぎであった。

ところが中国経済が拡大し、中国の人々が経済力を持って押しかけるようになると、モナコの港を見下ろす丘全体が、中国人だけでなく、アラブの人々やアジアの人々で埋め尽くされてしまった。

顔見知りのマネージャーが私たちのために良い席を見つけられる余裕は残っていたが、ヨーロッパの優雅な雰囲気はなくなってしまった。

 

観光事業はあぶく銭だった

中国がサプライチェーンと称して、世界中のパテントを盗み、法律を破って経費のかからない、安い物を作ったうえ、労働者を搾取して膨大なダンピングを行った結果、世界中にお金が溢れた。

トランプ大統領が指摘しているように、中国はそういった不正な経済活動を通じて、年間5000億ドルという利益を上げ続けた。その結果、世界には二つのことが起きた。

一つは世界中の人々が中国の作った安い日用品を買うようになった結果、これまでと比べて余分のお金を持つようになった。とくにアメリカではその傾向が強かったが、貯蓄を好まないアメリカの人々は余った分をせっせと消費した。

その消費の多くが、アメリカ人の好きな豪華なバケーションやレジャーに使われるようになり、国際的な観光業が繁栄することになった。アメリカのフォーシーズンズや、マリオットなどといった巨大な資本を持つ観光産業が世界を動かすようになった。

もう一つは、安いダンピングによって膨大な資金を手にした中国の人々は、これまた豪華な物への消費を増やし、世界的な観光旅行をはじめた。フランスやイタリアでブランド品の買い占め、日本で爆買いといった現象が起きたのはその表れと言える。

そういったいわば中国が作り出したあぶく銭によって世界の観光事業というものがまさに巨大な雲のように拡大した。こうした状況がコロナウィルス騒ぎによって世界の観光業が大打撃を受ける直前の模様であった。

そしていまウィルス騒ぎによって、基本的にはその日、その日の収入に頼っているホテル、レストラン、航空業といったいわば消費的産業は大きな打撃を受けている。

世界の観光産業、ホテル、レストランといった、いわばその日暮らしの産業が、コロナウィルス騒ぎから立ち上がれないのは、企業の体質は同じでありながら、その規模が大きくなりすぎたために、仕事を取り戻すためには莫大な資金を必要としてしまっていることである。

ところがそういった資金の源である中国が、ウィルス騒ぎだけではなく、アメリカから強い圧力を受け、機能を低下させてしまっている。ウィルス騒ぎが一段落すれば世界の景気が一挙に戻ってくると誤解をしている多くの人々はこの重要な問題を見過ごしている。

つまり、コロナウィルスによる中国のビジネスの停滞は、中国自らの不法行為が招いたアメリカからの反発によるもので、その結果、経済活動全体が機能しなくなっているというのが現実である。

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