【関】中国のもう一つの特徴は、天帝信仰です。北極星の一点を中心に、周囲を星々がめぐるように見えることから、北極星を「天」と呼んで一人の皇帝(天皇大帝)に絶対権力を移譲、集中させた。一神教的発想の典型です。
【石】日本には元来、皇帝のような絶対権力者がいなかった。小部族が集まった上に大和朝廷を戴くような緩やかな統治形態で、天皇についても同様のことがいえます。
【関】たしかに日本史上、天皇の命令は絶対でした。ただしその命令は、じつは天皇本人の意志ではない。
【石】どういうことでしょうか。
【関】天皇の命は、神からの託宣のかたちを取ります。天皇(王)と皇后(正妃)の下に男子と女子が生まれ、男子が即位すると女子は巫女として神託を受け、神命を天皇に伝える。
ところが神託の本当の出どころは母(前皇后)の実家で、要は外戚の地位を獲得した豪族が実権を握っているのです。完全な母系社会による支配。
【石】いまの私の境遇と同じですね(笑)。女房とその実家のご両親に支配権を掌握された操り人形。
【関】中国の家制度についてはどうですか。
【石】中国の場合、とくに漢民族は完全な父系社会です。それも一種の「拡大された父系社会」であって、たとえば石一族の例でいえば、1世帯や2世帯ではなく、数百世帯の「石」家が同じ地域に固まって住んでおり、一つの宗族を構成しています。
宗族の族長には必ず男子が立ち、父系の権威・象徴として一族を管理する。先祖を祀る祀堂に女性は簡単に入れず、女性はいわば宗族の付属品、子孫を繁栄させるための道具でしかない。男子の妻は外の一族から嫁いでくるので、宗族内での女性の立場がありません。
だから、縄文文明から発した日本文明が「女性的文明」であるとすれば、中国文明はまさに「男性的文明」。皇帝独裁の発想もそこから生まれるのです。
更新:11月23日 00:05