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「エンタメが現場から崩壊しかねない」ホリプロ社長が恐れる最悪の事態

2020年05月16日 公開
2020年05月18日 更新

堀義貴(株式会社ホリプロ代表取締役社長)

会見で触れられなかった自粛への感謝

――イベントの自粛を要請した政府に対しては、どうお考えでしょうか。

【堀】 2月末のイベント自粛要請時から、補償が必要だと各所に働きかけてきました。しかし安倍総理をはじめ政府は、一貫して「自粛したイベントの補償はできない」という姿勢です。

政府がまとめた緊急経済対策では、実質無利子・無担保の融資を行なう制度がありますが、当然、返すあてがなければ成立しません。

当初の政策が急に変更になって、国民1人当たり10万円の支給が決まりましたが、支給がいつになるのか現時点ではっきりしないし、本当に必要な方以外にも配られてしまう。

いっそ「私はいらない」という人から寄付を募るとか、そういうことにも支援をしていただけないか。

現在は公演自体を開催できないため、照明や美術、衣装に携わるスタッフの仕事はどんどん失われています。彼ら彼女らの生活を守るためには、悠長なことはいっていられないのです。

エンタメ業界が現場から崩壊していく事態を、私は最も恐れています。

――4月2日に政府・与党がまとめた税制面での支援策では、中止になったイベントのチケットを購入した人が主催者側に払い戻しを求めなかった場合、寄付とみなして税負担を軽減する措置が盛り込まれました。これで払い戻しが減れば、主催者の負担も軽くなると思いますが、いかがでしょう。

【堀】 お客さんのなかには、税制優遇措置を受けて、またエンタメ業界を応援したいという気持ちから、払い戻しをしないと言ってくださる方がいました。大変ありがたいことで、感謝しています。

ただもちろんのこと、大半の方は現実問題として、払い戻しをされます。最終的に主催者の手元に残った金額では、総勢何百人のキャストやスタッフに還元できない。大きな赤字になることはいうまでもありません。

――一方、イベントへの補償については、税金で賄うことに否定的な意見も見られました。

【堀】 もちろん、エンタメ業界以外にも辛い状況に置かれている方がいることは理解しています。私たちは決して、自分だけが助かりたいわけではありません。

ただ、3月の1カ月間でスポーツや音楽、演劇を含めたライブエンターテインメントの自粛により、延べ約5800万人もの移動が止まりました。

この対応が感染拡大防止にどれほどの効果があったか正確にはわかりませんが、私たちは何百億円というお金を失ってでも苦渋の決断をしました。

ところが、4月7日の安倍総理の会見では、医療従事者やイベントに行かなかった国民への感謝の念は述べられたものの、イベントの開催を自粛した人たちへの労いの言葉は一切なかった。

政府からの自粛要請に従ってきたのに、それに対する「ありがとう」の一言もない。私たちが必死に努力しても評価されることはなく、この事実が忘れ去られていくのではないかと危惧しています。

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