
ホストクラブに頻繁に通い、多額の金銭を投じる「ホス狂い」といわれる女性たちの実態とは?高校生の頃から歌舞伎町に足を運び、トー横キッズやホストなどの現場を取材してきたライターの佐々木チワワ氏は、著書『歌舞伎町に沼る若者たち』にて、歌舞伎町やホストクラブに通う女性のリアルを社会学的に分析し、その諸問題の解決策までを提言している。
本稿では、同書より「ホス狂い」の定義、そしてホストクラブに通う女性客の層を分析した内容をお届けする。
※本稿は、佐々木チワワ著『歌舞伎町に沼る若者たち』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです
ホストクラブに投じる金額だけを見ると、本人の収入に比して「過剰に金銭を投じている」のか判断がつきづらい。あらためて「ホス狂い」とはどういう人のことを言うのか、筆者なりに再定義するならば以下のとおりだ。
ホストに対する金銭的・生活的・精神的依存が、本人の生活と自己認識の中心に位置し、自己犠牲を伴ってでもホストクラブに通う状態。
【金銭面】
収入に不釣り合いな高額出費がある場合。家賃や生活費など支払わなければならないものよりもホストクラブ代を優先してしまう状態。さらに進行すると、売掛や立替などで数十万〜数百万円の借金を重ねることになる。
【生活習慣】
日常生活や友人関係・仕事関係よりもホストを優先している状態。さらに進行すると、友人関係についてもホストに干渉され、交友関係が希薄になる。
【自己犠牲的行動】
ホストクラブで使う金銭を稼ぐために働き方を変える場合。脱サラして事業を起こすケースもあるが、手っ取り早く金を稼げる風俗、パパ活といったいわゆる「夜職」に従事するケースが多い。さらに進行すると、担当ホストのためにどこまで過酷な労働に身を投じられるかで、献身性を測る傾向がある。
【精神的依存】
ホストとの関係性や承認がないと精神的に満たされない状態。さらに進行すると、客という立場であるにもかかわらず、ホストに嫌われないため、捨てられないために、下手に出てすべてを捧げようとする傾向がある。

次に、先に説明した金銭的・生活的・精神的依存の度合いに応じて、女性客を4つに分類してみよう。
①ライト層(遊び感覚でカジュアルエンジョイ・ファンおよび推し活の延長)
②エスカレーション層(サポーター・専属顧客)
③コア層(太客・ガチ恋・担当の一番になりたい・愛と義務の狭間)
④オブセッサー層(妄信的信者・戦友・御恩と奉公・依存と執着)
①ライト層:「自分の仕事と人生が優先」
ホストクラブを「エンタメ」として割り切り、使える金額によって「自分軸」で通う頻度を調整している層。ホストクラブでの経験を「非日常」の娯楽として、日常のストレス解消や自分へのご褒美、友人付き合いの一貫として行なう。「SNSで有名なホストに一目会ってみたい」というミーハーな客もこれに属する。
ホストへの依存度は低めであり、連絡が来なくても気にならない。店に行って楽しむことやSNSでのコンテンツで満足しているため、ホストにもそれ以上の関係を求めていないことが多い。
「YouTubeを見てから、ホストクラブに行ってみたいとはずっと思っていて。ホストに通い慣れてる知り合いに連れてってもらいました。知り合いにいろいろ教えてもらいながら、シャンパンコールとかがあるキラキラした店内を初めて見て......。LINEとか聞かれても今後行く気がなかったので基本断ってたんですけど、一人だけちょっとカッコいいなって思う子がいたので交換しました。
その後お店の外でご飯に誘われて。営業だよな、お金使わないとな......とは思ってたので、5万円下ろして財布に入れて。同伴でお店に行って、数万円使いました。これがホストクラブか、なるほど。と思ったんですけど、やっぱただ飲むだけで5万近いのは高くて毎回行けるほどじゃない。自分の生活を犠牲にしてまでホストのナンバーとかを応援したいわけじゃない。
キラキラした世界観は好きだし、好きなアイドルに似てる男の子と近い距離で飲むのは楽しい。お金はあんまり使えないから、連絡は無理しなくて大丈夫だよって伝えてます。お金使えなくて申し訳ないって思いたくないんで......。
月に1度、5万円で会いにいくのを楽しみに、普段は配信とかSNSを見て過ごしてます。ボーナスが入ったら、人生で初めてのシャンパンコールはしてみたいなぁ。でも自分の仕事と人生が大事だし、ホストクラブはいつか終わりが来るから、人生を犠牲にするほどじゃないですね」(27歳・派遣社員)
②エスカレーション層:「しばらくハマらせてくれればいい」
特定のホスト(複数人いる場合もある)を応援し、ホストの時間や対応を買うために金銭を投じる。金額は徐々に増えていく傾向があり、収入の一部をホストに使うことで自分の投じる金銭と自分自身の応援行為が価値のあるものだと感じる。ホストと特別な関係を築いたり、投じた金銭分のリターンを欲したりする。
ただ、コア層以上に比べると主体はあくまで自分にあり、「指名ホスト都合」よりも「自分都合」で金銭を投じる。ホストクラブへの依存度は中程度。ホストクラブが生活の重要な部分になり、ホストのための消費を中心に生活リズムを調整するようになる。
「ホストにハマって、ノリで売掛(ツケ払い)して、風俗始めたんですよ。そしたら面白いくらい稼げちゃって。金銭感覚バグりましたね。1日で10万円とか稼げるんで。ホストクラブの初回に行きまくって、枕とかデートとかいろいろ時間使ってくれたらお金使って、みたいな遊び方してて。
大事なのは、担当が私に何をしてくれるか、どこまでできるか。お金使った子が偉いんだから、お金使ってる私を優先しろっていう戦闘民族でしたね笑。細客の子がシャンパン入れた日にわざと高額のシャンパン入れて被らせて泣かせたり。担当からしたら仕事増えるんでめんどくさかったと思います。
エースになりたいとかはとくになかったけど、使った金額分仕事して欲しかったですね。二人のホストを指名して、一人といい感じだったけど喧嘩したらもう一人のほうに高額使うとか、駆け引きも含めて楽しんでました。
本営で付き合うとかあったけど、所詮ホストで私以外の女とも会ってヤッてるやつが、他の店に行くなとか言う権利ないと思ってたんで。
最初に風俗始めるきっかけになったホストは、とにかく時間使って特別扱いしてくれるホストでした。そっからやっぱ尽くしてくれないと無理というか。お金稼げるってわかるとみんながっついてくれる感じが楽しくて、けっこう私は遊び散らかしてて、担当狂(一人の担当ホストにのみ入れ込むこと)じゃなくてザ・ホス狂いって感じかなぁ。
金の切れ目が縁の切れ目ってわかってるからこそ、しばらくハマらせてくれたらそれでいいよって感じです」(24歳・風俗嬢)
③コア層:「娯楽のホスト遊びがいつしか義務に」
生活や人間関係の中心がホストとの関係になり、自分の生活費やその他出費を犠牲にしてまでホストに投資する。通常の生活を送るうえでの収入以上の金額をホストクラブに投じるべく、風俗やパパ活、借金などで資金を調達するケースが増える。
ホストにとって重要な客であることに誇りをもち、ホストとの擬似的な恋愛関係や自己承認欲求の充足に依存している。ホストからの承認が精神的支柱であり生活の中心であるため、ホストクラブに通う時間が優先でプライベートを犠牲にすることが多い。
ホストに嫌われたくない、担当の一番になりたい・なり続けなくてはならないという恋愛感情と義務感のバランスが崩壊している場合が多い。金銭を投じているからいまの関係が維持できているという自覚があるからこそ、一度引き上げた金額をなかなか下げられず、「○○○万円使えている自分に意味と価値がある」と、自らを金銭の枠に当てはめてプライドを保っている。
「いま余裕で生活費滞納してますね。いまの担当は優しいんで『無理しなくていいんだよ、頑張ってるよ』って言われるんですけど。じゃあ先月150万円使ってた私が今月20万円しかもってこなかったら、いままでどおりの連絡頻度じゃなくなるんだろな、使えない子って見なされるんだろなって思ったら、生活費よりも担当に使うお金を優先してました。
ホストが『使うお金の金額がすべてではないよ』って言うのは営業トークなんですよ。だからむしろ頑張りを褒めてほしいです。あなたのためにこれだけ無理できるよ、頑張ったんだよってとこを認めてほしい。
病んでると、逆にこれっぽちの金額で好きとか言ってごめん、ソープとかAVとかやって全部を犠牲にしてるわけじゃない私が一番になりたいとかガチ恋してる資格ないよな、とか思います。
いまの担当は、俺のために働けとか限界までやれとか、そこまで言ってくれないから、私はデリヘルでとどまってるのかも。自己肯定感の低さを金で埋めて、勝手にノルマつくって苦しくなってます。自分が風俗やってるからこそ、クソ客になりたくない。いい子でいたくて。結果都合いい子やってます。
幸せなときももちろんたくさんあるけど、何やってんだろうなって鬱になるときはあります。いつから娯楽のホスト遊びが義務になったんですかね」(23歳・風俗嬢〈大学休学中〉)
④オブセッサー層:「時間とお金を担当にすべて捧げたい」
特定のホストに対して盲進的な忠誠を示し、他のホストクラブや店舗には一切行かず、すべての資金と時間を捧げる。俗に言う「担当狂い」。担当ホストの力になること、担当ホストに喜んでもらうこと自体が生活および人生の目的化しており、生活のすべてがホストのために回っている状態。
ホストに対する感情は恋愛を超えた執着や崇拝に近い従属と自己満足。ホストに「選ばれること」や「特別視されること」に強い価値を見出しており、担当と同じ目標を達成することに意義を感じる。
ホストへの依存度は極めて高い。ホストからの評価や承認が絶対的な基準であり、ホストクラブに通うことが人生の中心に位置する。
「この人のホスト人生に、私の時間全部捧げようって。担当が年間2億円っていう売上の目標があるなら、私はそれが少しでも達成できるように努力するだけ。自分のためじゃここまでできなかった。
いままでのホストは、適当に風俗出勤して稼いだお金を使ってちやほやしてもらえればそれで良かったんですけど。初めてこの人の目標を達成したい、壇上に上げたい、圧倒的ナンバーワンでいてほしいなって思って。その横にいる圧倒的ナンバーワンの女の子になりたかったんです。
お店でお金を使うタイミングも、全部担当任せです。私は最低ノルマの金額を稼ぎ続けるだけ。遊びじゃないホスト通いの楽しさとか、担当の凄さとかカッコ良さとかは全部私だけが知ってればいいです。ホストしてもらってお店で楽しんでる被りは、そっちの世界で楽しくやってくださいって感じ。
一回、自分に負けて働くのをサボってしまったときがすごい苦しくて。担当の横にいる資格ないなって。だから私は働き続けて、理想の自分で担当の側にいたいんですよね。担当のために風俗での出勤増やして、自己投資してパパ活でも稼げるようになって、海外出稼ぎも行けるようになって。すごい、私こんなになんでもできたんじゃん! 無敵じゃん!って。
この人のためにここまで捧げられる人なんて他にいないはずだから、高額使う被りができると正直焦るけど、それ以上に稼げばいいだけなんで。担当のために身体も人生もかけられないやつに負けないですよ。
伝票で愛を伝え続けて、お店でキラキラしてる担当も、家ですっぴんでゴロゴロしてる担当も全部受け止めて愛してお金使えるの私だけなんで。どれだけ歪んでても、理解されなくても。私の人生はもともと何もなかったんだから、色をつけてくれた担当に全部捧げてお礼したいんです」(23歳・風俗嬢)
いかがだろうか。各階層の女性たちの声を聞くと、それぞれ担当ホストとの距離感と使える金額によって、どこまで「ホストクラブでの評価基準」に己の価値が準じているかがよくわかる。彼女たちはホストクラブで疑似恋愛関係だけではなく、日々の仕事や担当への貢献といった頑張りを「承認」される対価として、金銭を払っていると言えるだろう。
更新:05月18日 00:05