2020年05月06日 公開
アメリカのトランプ大統領は今年4月、同国のWHO(世界保健機関)への拠出金停止を発表した。米中対立が先鋭化するなど、新型コロナウイルスにおける国際協力は十分とはいえない。そもそもWHOはいかにして生まれ、どのような役割を果たしてきたのか。東京都立大学法学政治学研究科教授で、保健協力について詳しい詫摩佳代氏が述べる。
本稿は月刊誌『Voice』2020年6月号、詫摩佳代氏の「WHOは保健協力の世界政府ではない」より一部抜粋・編集したものです。
国境を越える感染症には、国境を越える対応が不可欠である。しかし新型コロナウイルスを巡っては、国家ごとの対応や国家間対立が目立ち、また世界保健機関(WHO)への批判が相次いでいる。
従来、感染症への対応においてリーダーシップを発揮してきたアメリカは、中国との対立姿勢をむき出しにし、イランへの制裁を継続している。
トランプ米大統領はWHOが「あまりにも政治的で、中国寄りである」と批判、当機関への拠出金を停止すると発表した。G7外相会合や国連安全保障理事会も、米中の対立を反映して、共同声明や決議を採択できない状況が続いている。
本稿では、感染症をめぐる保健協力の現状と展望について、過去の経験を踏まえつつ、また現状の国際政治を読み解きつつ考察していきたい。
そもそも感染症をめぐる保健協力とはどのような仕組みなのか、国際政治はそこにどのように関わってきたのか、新型コロナウイルスをめぐっては何が問題なのか、今後、どのように終息に導いていけばよいのか、日本はどのように関わっていくべきなのか。このような問いを読み解いていきたい。
更新:11月22日 00:05