2020年04月23日 公開
2022年07月08日 更新
日本の感染症対策について考えるとき、感染症学などの医学は国際的に見ても発展しているが、公衆衛生学はまだ発展途上であり、さらにいえば感染症対策の公共政策学は未発達であるといわざるをえない。
危機管理学は、この公共政策学に近い立場であるが、今後、新感染症に対する公共政策学、危機管理学の構築が必要である。
今回設置された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議において、感染症学研究者として優秀な専門家が多数招集されているが、このなかに公共政策学、危機管理学の専門家はほぼいないという状況である。
そのため、専門家会議において学校の休校措置や社会政策に関する議論はなされていない、という実態も明らかとなった。日本政府は、専門家会議に対して感染症の特性や医療体制の具申を求めるだけで、社会政策に関する判断はこうした学術的根拠なく政策決定しているように見える。
新感染症に対応する危機管理学も、これまで述べてきたとおり、危機管理学を構築する5つの機能である、(1)インテリジェンス、(2)セキュリティ、(3)ロジスティクス、(4)リスクコミュニケーション、(5)イノベーションのそれぞれについて具体的政策化が求められる。
新感染症パンデミック対策についても、インテリジェンス活動は有効に実践されているか、セキュリティは構築されているか、ロジスティクスは展開されているか、リスクコミュニケーションは有効に機能しているか、イノベーションは十分に活用されているか、総合的にマネジメントされなくてはならない。
新感染症だけではなく、自然災害や原発事故、テロリズムやミサイルなどの国民保護事案、戦争などの安全保障、情報セキュリティにおいても、オールハザード・アプローチによって危機管理を実践するとき、この5つの機能が必ず必要となるのである。
■福田充(日本大学危機管理学部教授)
1969年、兵庫県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。2016年4月より現職。専門は危機管理学、リスク・コミュニケーション。内閣官房委員会委員、コロンビア大学戦争と平和研究所客員研究員などを歴任。現在、内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議委員。著書に『リスク・コミュニケーションとメディア』(北樹出版)、『テロとインテリジェンス』(慶應義塾大学出版会)など。
更新:11月24日 00:05