2020年04月12日 公開
2023年07月12日 更新
写真:大坊崇
新型コロナウイルスで揺れる世界。日本ではついに4月7日、緊急事態宣言が発令された。こうした危機において、政治家はどのような行動をとるべきか。前大阪市長である橋下徹氏が、一連の政府の対応を踏まえ、自身の首長としての経験に基づく見解を述べる。
本稿は月刊誌『Voice』2020年5月号、橋下徹氏の「政府は結果責任から逃げるな」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:Voice編集部(中西史也)
――いま世界は、新型コロナウイルスの脅威に揺れています。安倍首相は2月27日、全国の小・中・高校に一斉休校を要請しました。新型コロナに対する政府の対応をどう評価しますか。
【橋下】一斉休校自体は正しい措置だったと思います。ただ、今回の政府の対応には問題があった。危機的状況において何を譲歩して日本全体のために何を達成するのかについて、国民との合意を得るリスクコミュニケーションの面で不十分なところがありました。
政府として国民に何をお願いするのか、ここで僕が著書『交渉力』で強調した「要望の整理」を行なう必要があるわけです。一斉休校の判断は正しかったけれど、なぜ学校だけを休みにするのか、いつまで休校にするのか、といった理由と期限の説明が足りなかったと思います。
まず、新型コロナウイルスは未知の部分が多い。未知の危機に対しては最初に強い措置を講じ、ウイルスの実体が明らかになるにつれて徐々に措置を解除していくのが危機管理の鉄則です。
感染症は放っておけば、指数関数的に感染が拡大します。そうなると医療崩壊が生じ、死亡者が激増してしまう。いまのイタリアがそのような状態です。
医療崩壊を防ぐためには感染拡大を緩やかにする「ピークカット」をする必要がありますが、そのためには人の活動を抑制しなければなりません。
この「時間稼ぎ」をしているあいだに、ウイルスの特性を明らかにして治療薬やワクチンを開発したり、感染して抗体をもつ者が増えたりすることを待つのです。こうして感染に強い社会になっていくわけです。
政府は国民に対して「一気に感染者が増加し、医療現場が崩壊する最悪の事態を避けるために、時間稼ぎをする。その一つの策として小・中・高校を休校にし、生徒約1400万人の活動を抑制させてもらう」と堂々と表明すべきでした。
子供を守るためというよりも、むしろ社会を守るために子供たちに我慢してもらうというメッセージです。さらにいえば、重症化しやすい高齢者にも外出自粛を要請すべきでした。
更新:11月15日 00:05