2020年04月23日 公開
2022年07月08日 更新
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新型コロナウイルスに揺れる日本。日本大学危機管理学部教授で、内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議委員を務める福田充氏は、政府の対応のみならず、国民一人ひとりが平時から危機管理のリテラシーを高める重要性を指摘する。
本稿は月刊誌『Voice』2020年5月号、福田充氏の「新型肺炎、緊急事態宣言を恐れるな」より一部抜粋・編集したものです。
危機管理における「リスクコミュニケーション」の重要性は、新型コロナウイルスにおいても変わらない。
感染症の蔓延を防ぐために、市民がなすべきことを社会教育するために、内閣官房や厚生労働省は自治体やメディア、市民に対して有効なリスクコミュニケーションを展開せねばならない。
とくに市民に対しては、手洗い、除菌、うがい、咳エチケット、マスクの使用の励行により飛沫感染や接触感染を防ぐことは感染症対策全般にきわめて重要であり、個人の感染リスクを下げる重要なリスクコミュニケーションである。
こうした健康に関する個人のヘルスリテラシーを高めるためのコンテンツを、テレビや新聞、雑誌、インターネット、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、チラシ、OOH(屋外広告)など多様なメディアで展開するマルチメディア・アプローチが重要となる。
社会において感染症のクラスター(感染集団)をつくらないためにも、市民へのリスクコミュニケーションが不可欠である。実際に日本国内でもクラスター化した、比較的狭い密閉空間であるライブハウス、スポーツジムなどの施設の利用を避けることを社会的に周知することも重要である。
満員電車や会社の狭いオフィス、学校の教室での感染拡大によりそれらがクラスター化することを避けるための、在宅ワークの実施や学校の休校措置は感染症対策においては一般的な手法である。
なぜそれが必要であるのか、市民の協力を得るためにも、政府や厚生労働省による丁寧な説明が求められる。
流言発生だけが原因ではなく、感染拡大防止のために必要とされるマスクや除菌剤などが市場からなくなったことには、一定の合理性が認められる。やはりこれも一定期間のあいだに大量の人が一気に購入することで発生する市場の需給バランスの混乱である。
こうした危機事態において必要品を慌てて買い占めるのではなく、平常時から少しずつ備蓄しておくことが重要であり、これも「エシカル消費(倫理的消費)」として、市民への社会的教育が求められる。
こうした市民のヘルスリテラシーや、流言などに対するメディアリテラシーを高めるためのリスクコミュニケーションの構築が今後の課題であろう。
更新:11月21日 00:05