2020年03月19日 公開
2021年08月13日 更新
『ジョーカー』のホアキン・フェニックスは、各地の受賞スピーチで積極的に政治的な意見表明を行なったことでも話題を集めました。
人種差別やマイノリティ差別(昨年のアカデミー賞授賞式では、司会に決定していたケヴィン・ハートが同性愛者に対する過去の差別的発言を掘り起こされて辞退しています。今年の授賞式も昨年に引き続き司会者不在で行なわれました)、女性差別やジェンダーの不均衡(2月24日には#MeToo運動の発端となった映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインに有罪評決が下りました)、動物虐待や環境問題などの不正義を厳しく糾弾したのです。
ホアキンの批判は、アカデミー賞のあり方にも向けられていますが、当のアカデミー賞側はその批判を甘んじて受け入れる構えを見せているように思います。
白人男性という自身の多数派としての属性に自覚的なホアキンは、自分たちこそが率先して世界をより良い場所に変えていく責任を負っていると感じているようです。
アカデミー賞はもともとハリウッドの映画人のためにつくられた内輪向けの賞にすぎません。
しかし、映画こそはアメリカ文化の象徴であり、その中心を自負しているハリウッドは、その役割を維持し続けるために、時代に合わせた国際的な賞のあり方を模索しています。
少し意地の悪い言い方をすれば、多様性をアピールすることは、自らの権威を保持したいハリウッドの戦略でもあるわけです。
『パラサイト』の歴史的快挙は、そうしたハリウッドのアピール戦略の方向性と見事に合致するものでした。アカデミー賞の思惑はともあれ、その意義は決して小さくありません。
映画の人種的多様性に新たな門戸を開いた『パラサイト』は、未来の世界映画史で繰り返し記述され続けることでしょう。
更新:11月22日 00:05