2020年03月14日 公開
2020年03月17日 更新
『パラサイト 半地下の家族』 全国公開中
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韓国映画『パラサイト』がアカデミー賞で最多4部門を制し、世界に衝撃を与えている。映画研究者の伊藤弘了氏は、この躍進を「歴史的必然」だと語る。ポン・ジュノ監督の過去作の魅力と共に、『パラサイト』オスカー獲得の真相を述べる。
本稿は月刊誌『Voice』2020年4月号、伊藤弘了氏の「『パラサイト』アカデミー賞の衝撃」より一部抜粋・編集したものです。
韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督、2019年)が、今年の米国アカデミー賞で最多4部門を制し、世界に衝撃を与えました(この結果は、日本でも驚きをもって迎えられました)。
たしかに国際長編映画賞では本命視されていましたが、それに加えて作品賞・監督賞・脚本賞といった主要部門の賞を3つも射止めてしまったのです。
作品賞は実質的な最高賞に相当するもので、外国語映画(非英語作品)が同賞を受賞するのは、92回にわたって開催されてきたアカデミー賞の歴史上、初めてのことです。
まさしく「歴史的快挙」と呼ぶにふさわしい成果でしたが、これは同時に「歴史的必然」でもあったと私は考えています。『パラサイト』はなぜ今年のアカデミー賞を席巻したのか?
もちろん、作品が並外れて優れていることは大前提です。ですが、賞というのは作品の質を客観的に審査して同一基準のもとで優劣をつけるためだけの場ではありません。
むしろ、そこでは客観性よりも賞を与える側の立場表明こそが求められており、それに対する世間の信頼が賞の権威を担保しているのです。
アカデミー賞のように世界的な注目を集める賞となれば、なおさらその点には意識的でしょう。
映画はしばしば「世を映す鏡」であるといわれます。
そうであるとすれば、映画を対象とした賞レースが、同時代の社会的背景や政治的動向の影響を受けるのは道理です。そして、賞の開催者の立場を最も雄弁に語るものこそ、彼/彼女らが選び出した受賞作にほかなりません。
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更新:11月22日 00:05