2020年03月06日 公開
2023年04月17日 更新
※画像はイメージです。
新型コロナウイルスの蔓延に世界が揺れるなか、その「震源地」である中国はどういう状況なのか。急速に発達するデジタル技術をコロナ対策に活用できるのか。中国に精通する気鋭のジャーナリストと、体当たりルポを敢行したノンフィクションライターが語り尽くす。
本稿は月刊誌『Voice』2020年4月号、高口康太氏&西谷格氏の「デジタルチャイナは幸福か」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:大隅元(PHP研究所)
――新型コロナウイルスの騒動において、中国のデジタル社会はどう影響しましたか?
【高口】 デジタル技術を使えば疫病を封じ込められるのではないか。たとえばアリペイやウィーチャットの位置情報を追えば、感染者と接触した人をリストアップできるのでは。
日本の中国ウォッチャーにはそんな話をする人もいましたが、現実はもっとシビアです。
上海在住の藤田康介医師に取材したところ、「手鼻、タン吐き、立ち小便、手洗い、トイレの清潔さなどで中国はまだまだ不衛生」だと指摘し、そうした衛生意識の低さが疫病の土壌だと警鐘しています。
摩天楼や高速鉄道など先進的なインフラはできても、人間の意識はなかなか変わらない。ハードとソフトのアンバランスという中国の課題が露呈しました。
【西谷】 現地の様子を動画サイトにアップする中国人もいました。それがウィーチャット経由で(中国では利用が規制されている)「YouTube」に拾われ、世界中の人たちが視聴した。
背景には、政府の公式見解とは異なる情報を国外に発信したい、という思いがあったようです。政府の初動が遅れたことへの国民の怒りは、思いのほか大きかったのでしょう。
【高口】 一方で、2002年にSARSが流行したときには「お酢をたけば空間殺菌ができる」、2005年に鳥インフルエンザが大流行した際は「ニンニクを食べれば大丈夫」といったデマ情報が流布していました。
当時に比べれば、今回はマスクの奪い合いをしているだけ、だいぶマシになったと思います。
【西谷】 根拠のある情報に基づいて行動していますね。
【高口】 『新華社通信』や『人民日報』が、「ウェイボー」(中国最大のSNS)を通じて、「正しい情報」を流しているのが大きいです。
もちろん、疑わしい情報はまだありますが、以前よりも正しい情報にアクセスしやすくなったのは、デジタルチャイナの進歩でしょう。
更新:11月22日 00:05