2020年02月22日 公開
2023年01月16日 更新
今、世界中から注目を集める気鋭の哲学者、マルクス・ガブリエル。史上最年少の29歳でボン大学哲学科の正教授に就任した「天才」だ。
彼が日本の読者のために初めて語り下ろした最新刊『世界史の針が巻き戻るとき「新しい実在論」は世界をどう見ているか』(PHP新書)より、内容を抜粋してお届けする。
資本主義は労働の役割分担を利用して、「一人の人間が、もう一人が何をしているか知らない」という事実を価値に変換します。
それが資本主義のビジネスです。あなたが何をしているか、相手は知らない。それがあなたのアドバンテージになります。
この人は自分が何をしているか知らないという視点から、あなたはいくら金額を請求することができるか計算します。これが資本主義の「噓」です。
資本主義そのものが不透明なシステムなのです。資本主義に透明性が担保されることはありません。でないと機能しないからです。
だから資本主義そのものは必ずしも悪ではありませんが、資本主義には、「悪」の潜在性があるのです。
それを理由に、多くの民主主義派の理論家が「人を逆の方向に引き込もうとする」と資本主義を批判します。民主主義においては透明性が重視されるからです。でも、そんな批判は必要ありません。
必要なのは、生産状態を左右する資本家に、民主的な思考訓練を受けさせることです。有名な慈善家であるビル・ゲイツやジョージ・ソロスのようなレベルではなく、中間レベルの資本家です。
更新:11月22日 00:05