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断末魔の米民主党、トランプ大統領弾劾の愚

2020年01月02日 公開
2022年03月10日 更新

渡辺惣樹(日米近現代史研究家)

渡辺惣樹(日米近現代史研究家)※写真はイメージです。

昨年末(12月18日)、米国下院は二つのトランプ大統領弾劾決議案を可決した。

第一の決議は、「ウクライナのゼレンスキー大統領に、米国からの支援金の拠出を保留すると脅して、2020年の大統領選挙に有利になるような工作(政敵となるバイデン副大統領に関わる捜査)を依頼した。大統領権限の濫用である」というもの。第二の決議は、「この問題にかかわる下院の捜査を妨害した」という内容だった。

筆者は昨年末に「アメリカ民主党の崩壊2001-2020」(PHP研究所)を上梓した。21世紀の米国外交を分析し、民主党の激しい腐敗と左傾化の実態を描き、トランプ大統領再選の可能性が限りなく高いことを論証した。

21世紀に入ってからの米国外交はネオコン(ネオコンサーバティブ)と呼ばれる政治勢力が主導した。彼らの狙いの一つに徹底的なロシア封じ込めがあった。「NATOの東進」(旧ソビエト衛星国のNATOメンバー化)はその具体化だった。

 

30億ドルをウクライナに注ぎ込んだオバマ政権

ネオコン官僚の跋扈(ばっこ)するオバマ政権は、ロシアと国境を接し、ロシア嫌いのウクライナを親米政権にすることを画策した。

ウクライナは、ヨーロッパ諸国の中でも政治腐敗がとりわけ酷いことで知られている。ロシアのプーチン大統領でさえ音をあげるしたたかな「腐敗国」である。

オバマ政権は、そのウクライナに政変をしかけた。現地でその陣頭指揮にあたったのは、ビクトリア・ヌーランド(NATO米常任委員次席代表)だった。

彼女の夫は、ネオコン理論家の大物ロバート・ケーガンである。2014年2月、米国の意のままにならなかったヤヌコヴィッチ政権が瓦解した。暫定政府の大統領にはペトロ・ポロシェンコが就いた。

この年の4月、同国最大の天然ガス会社ブリスマ(Burisma Holding)の役員に、米副大統領の次男ハンター・バイデンが就任した。毎月の報酬は5万ドルで、年に数回ヨーロッパ諸国で開催されるエネルギーフォーラムに顔を出し、役員会に出席することだけが彼の仕事だった。

ハンターは13年にコカイン使用で米海軍を解雇されたばかりで、エネルギー産業には何の知見もなかった。

親米姿勢のポロシェンコ政権に、米国からの金融・軍事支援が始まった。結局、オバマ政権は総額30億ドルをウクライナに注ぎ込んだ(*1)。それだけに、ハンターのブリスマ役員就任と米国支援の間に何らかの関連があると噂された。

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