2019年12月23日 公開
2023年02月01日 更新
(月刊誌『Voice』2月号では、産経新聞論説委員で前ロンドン支局長の岡部伸氏が在英3年半の経験を活かし、EUから離脱する英国の今後の動向を分析している。※写真はイメージです)
2019年12月12日の総選挙で大勝したボリス・ジョンソン首相は、2020年1月9日、下院においてEU(欧州連合)離脱関連法案を賛成多数で可決させた。英国は1月31日のEU離脱に向けて、大きく前進したことになる。
これから英国とEUは、「本丸」というべき自由貿易協定(FTA)の交渉に移り、ブレグジットの形を決めることになる。2020年末まで、離脱による激変を緩和する「移行期間」に入るが、わずか11カ月で英国はEUとFTA交渉で合意をめざし、発効までこぎ着ける必要がある。
※本稿は月刊誌『Voice』2020年2月号、岡部伸氏の「再度、離脱を選んだ英国の命運」より一部抜粋・編集したものです。
英国とEUのFTAは、カナダとEUが結んだFTAを参考に、安全保障など包括的な内容を盛り込んだ貿易協定が有力視されている。総選挙に大勝したことで、EUとの緊密関係を維持するソフトな離脱で穏健な協定になりそうだ。
しかし、EUはカナダとの交渉で約7年かかり、日本との経済連携協定(EPA)も交渉に5年以上、要している。
外交筋によると、英国とEUとのFTA交渉は10年近くかかるとの見通しもある。
2020年末までとはいえ、批准手続きなどを考慮すると、実際に交渉できるのは8カ月程度で、妥結は至難の業だ。
2020年末までに締結しなければ、世界貿易機関(WTO)のルールが適用され、関税が発生する「合意なき離脱」に近い大混乱に陥る恐れが高まる。FTA締結のめどが立たず、無秩序に離脱するクリフエッジ(崖っぷち)は回避されるべきだ。
離脱協定案では移行期間を1回に限り、双方が合意すれば、1年または2年延長できる。ただ移行期間中はEUのルールに縛られ、発言権はないが、年間約1兆円の拠出金は負担する。
英国の有権者が移行期間延期を受け入れるのか。その可否を6月末までに判断することになっており、FTA交渉は早くもヤマ場を迎える。
もう一つの懸念は、EU残留を望む英北部の地域政党、スコットランド民族党(SNP)がスコットランドでの59議席中48議席を獲得したことだ。
議席数は保守党の2割に満たず、政権の大きな脅威とはならないが、選挙戦でスコットランドの英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票の実施を訴えた。
今回の躍進で独立機運が再び高まり、SNPは政権に圧力を強めるだろう。
更新:11月25日 00:05