中国経済の先行きに対する懸念が国際的にも高まるなかで、中国政府は、債務比率の引き下げ(デレバレッジ)に本腰を入れた。
分子となる債務残高の圧縮のため、金融面の締め付けを急速に強めた。他方、分母となるGDPは6%台後半の高成長を達成した。
その結果、2017年の「クレジット・GDPギャップ」は、10%程度にまで急低下し、2018年にはギャップをほぼ解消してしまった。
結局、国際機関が警告を発してから数年が経過したが、執筆時点(2019年6月現在)において、中国で金融危機は発生していない。
こうしたマクロ的な分析以外にも、ミクロの企業財務データなどに基づいて、現在は問題が生じていなくとも、将来的に債務返済が困難になる蓋然性が高い「不良債権予備群」を推計して、じつは公式統計の数倍にも相当する不良債権があるといった分析もあるようだ。
中国の銀行監督当局によるミクロからのアプローチで積み上げられた数字と、国際機関等によるマクロからのアプローチで算出された数字で、中国の銀行システムの健全性について、まったく異なった評価が出てしまうのは何とも不可解ではある。
この謎を解くカギは、非銀行部門における資金の流れ、すなわちシャドーバンキングの急速な拡大にあると考えられる。
中国は銀行中心の金融システムであったが、もはや伝統的な銀行システムを見ているだけでは、中国の金融システム全体の実態把握は困難になっていることを示している。
しかも、非銀行部門の資金の流れについては、監督や統計の仕組みも未整備で、金融システムへの影響を把握することも困難を極める。中国金融当局にとっても、大変厄介な時代が到来したと言える。
更新:11月24日 00:05