2019年12月10日付『日本経済新聞』朝刊の一面は、大きな話題を呼んだ。「価格が映す日本の停滞 ディズニーやダイソーが世界最安値」という見出しを立て、他の世界都市に比べ、いかに日本のモノやサービスなどの価格が安いかを強調した。
「もっと価格を上げるべき」という声も多く聞こえるなか、安い物価がもたらすメリットについてはあまり論じられていない。そこで、本稿では、渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2020』 (PHP研究所)より、物価安とインバウンド需要の関係性と、日本経済への影響について述べる。
一時期に比べ、インバウンド需要の拡大傾向が鈍っている。その一因は、日本を訪れる韓国人旅行者の減少にある。
韓国については、2019年7月に日本政府がフッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドの3種類の半導体やディスプレイの材料について輸出管理を強化。
8月には輸出規制における優遇措置を取る国(ホワイト国)から韓国を除外したことで、韓国国内には日本への旅行をボイコットする動きが生じた。
その影響はすぐに現れ、2019年7月は韓国人旅行客が前年同月比7.6%減となり、8月は48.0%減、9月にはじつに58.1%減を記録。2020年に訪日外国人年間4000万人を目指す日本には痛い打撃となった。
もっとも訪日外国人数はトータルでは増加しており、2019年9月末現在で前年比4%増。韓国人旅行客の減少は、韓国依存度の高い一部地域以外ではさほど大きくない。
その一方で欧米諸国からの訪日外国人が増えているというように、客筋が変わりつつある。
とくに中国からの観光客は9月末までで740万人余を記録し前年比14.8%増。2018年は838万人だったが、このペースが続けば962万人に達し、状況によっては1000万人の大台を超える可能性がある。
観光庁が2019年10月16日に発表したリリース「【訪日外国人消費動向調査】2019年7〜9月期の全国調査結果(1次速報)の概要」によれば、2019年7〜9月の訪日外国人旅行消費額は、前年同期比9.0%増の1兆2000億円を記録。
過去最高を記録した同年4~6月の1兆2810億円(前年同期比13.0%増)には及ばなかったものの、引き続き高い数値を記録した。
同期の外国人1人当たり旅行支出が最も多い国はフランスで25万2117円、スペインが22万7362円で第2位。中国も20万9168円と上位を占める一方、韓国は8万5421円と際立って低い。
韓国からは、2019年4~6月に177万1000人が日本を訪問している。人数は多いとはいえ、もともと日本にお金を落とさない韓国人旅行者よりも、「上顧客」である欧米諸国や中国、あるいはASEAN諸国や台湾などの親日国からの訪日外国人をもっと大切にしたほうがいい。データはこの点を如実に示している。
更新:12月27日 00:05