2019年10月24日 公開
2023年01月13日 更新
――「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領により、NATO(北大西洋条約機構)加盟国の国防負担増、在韓米軍撤退、日米同盟の動揺など、「同盟体制の揺らぎ」が懸念されます。
「同心三角形」戦略を推進する以上、日本はこれまで以上に自国で役割を負担することが求められるでしょう。「アジアの終わり」を回避するために日本ができることは何でしょうか。
【オースリン】 トランプ氏は大統領候補だったときから、日本と韓国がホスト・ネーション・サポート(同盟国に駐留している外国の軍隊に対して受け入れ国側が行なう駐留支援)をもっと負担すべきだ、と訴えています。日本はいま、韓国よりも駐留経費を多く負担しています。
防衛費の問題はNATOの場合、加盟国が防衛費の対GDP比を2%にするコミットメントを交わしました。ところがそれを2018年に達成したのは、加盟29カ国のうち7カ国にとどまった。前年の4カ国からは増加しましたが、もっと増えてほしいですね。
防衛負担は日本にとって、国内イシュー(課題)だと思います。日本には高度な訓練を受けた自衛隊がおり、テクノロジーを使って近代化されています。
日本の防衛費はGDPの1%強程度ですから、もっと負担できるはずです。安倍首相は、F-35戦闘機といったハイエンド(高性能)な能力を獲得することに重点を置いてきました。
――安倍首相は、日本が防衛面で果たせる役割を増やすべきとの認識をもっていますね。
【オースリン】 日本が自国の防衛に必要であると考える、より大きな役割を担ってくれればいいと思います。それは世界中どこでも行けるアメリカのような軍隊をもつのではありません。
問題は、日本がいま保有している20隻ほどの潜水艦で自国の防衛に十分なのか、ということです。答えはおそらくノーでしょう。
もっと進んだ戦闘機をもつべきか? 日本はアメリカからF-35を100機以上購入するといいます。それはかなりの数ですが、日本のすべての島や領土を守るために十分か? 恐らくノーです。
防衛費の問題は、日本が自国の領土を守る戦略に直結する必要がある。日本はいまのままでも自国領土の多くを防衛できると思いますが、中国のパワー増強に鑑みれば十分とはいえません。
アメリカは、日本がアジアで覇権国になることは期待していません。日本の領土が攻撃された場合、自衛隊が主導権を握って応戦し、アメリカはサポートをするだけです。
日本がいま直面している脅威やチャレンジを考えると、軍事力をもっと強化してもいいと思います。
――安倍首相の宿願ともいえる憲法改正についてはどう考えていますか?
【オースリン】 憲法第9条を改正することは象徴的なものであり、安倍首相の視点からみるとたしかに重要です。あとは日本自身が決める問題でしょう。
そもそも安倍首相は、集団的自衛権行使や武器輸出、武器開発について、すでにほとんどの改正を実現しています。さらに日本に求められているのは、アジア地域の海上パートナーとよりアクティブに行動することです。
日本の沿岸警備隊は優秀で、他の空軍とアクティブな関係にある。日本の防衛予算は約500億ドルで、額としては国際的にみて多い水準といえます。憲法改正の象徴主義も重要ですが、改正が実際にどれだけ日本の行動を変えるかは別問題です。
更新:11月22日 00:05