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「北朝鮮が核を手放すことはない」 知日派の安全保障専門家が語る

2019年10月23日 公開
2023年01月13日 更新

マイケル・オースリン(スタンフォード大学フーバー研究所リサーチフェロー)

マイケル・オースリン

北朝鮮問題の解決策を誰も見出せていない

――金正恩氏は経済援助を得る交渉で優位に立つために、核というカードを使っていますね。

【オースリン】 北朝鮮の指導者は、つねに核を外交カードとして利用します。

北がIAEA(国際原子力機関)からの脱退を宣言した1994年、初の核実験を実施した2006年、そして核実験・ミサイル発射の中断とIAEAの査察に合意したにもかかわらず、2カ月も経たないうちにミサイルを発射した2012年もそうでした。

――そういう意味では、北朝鮮の「核保有」は固定化し、廃絶は不可能にみえます。

【オースリン】 彼らが実際に核兵器を手放すとは誰も考えていないでしょう。トランプ大統領がどう考えているかはわかりませんが、彼の口調では、まるで金正恩氏が核兵器を放棄すると思っているように聞こえることがあります。

また、アメリカが望んでいるのは現時点で北朝鮮の核プログラムを凍結させて、うまくいけばすべてのミサイル発射のモラトリアムを得ることである、と聞こえることもある。

私は、北が「regime change(体制変革)」以外の理由で核を放棄することはないと考えています。核を保有することは北朝鮮の国益にはならない、と金正恩氏が判断することはほとんどありえないでしょう。

はっきり言って、北朝鮮問題について誰もその解決策を見出せていません。日本には拉致問題があるので、北朝鮮とは特別な関係です。日本には北朝鮮からの労働者が多く滞在しています。

米朝間よりも日朝間のほうがはるかに交流が多いため、拉致問題は決定的に重要です。北朝鮮の態度を変えようとすることについて、日本は広範囲の戦略的視点をもつべきだと思います。

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