2019年10月21日 公開
2023年01月13日 更新
――米トランプ政権は、中国を明確な脅威と見なしています。アメリカはトランプ政権になる前から、中国の台頭を脅威と認識していたのでしょうか。
【オースリン】 ワシントンD.C.の全員ではありませんが、広範囲にわたって多くの人がそう感じていました。中国の対米政策はいくつかの点で成功していました。中国を近代化させ、国際貿易に関わらせる点で、アメリカが一役買ったのです。
しかし、同時に中国は、アメリカ主導の国際機関が提供する安定を必ずしも全面的に有り難がっているわけではありませんでした。その秩序を変えて、より支配的になりたかった。
都合のいいときは国際法を無視し、近隣国を脅かしている。中国は南シナ海に人工島をつくって軍用化し、アジアの勢力均衡を変えようとしています。
ホワイトハウス(アメリカ政府)は、中国のサイバー攻撃やスパイ行為、不公正な取引慣行と併せて、安全保障においても同国の政策を変えなければならないことに気付きました。
それを具体化した最初の大統領がトランプ氏です。彼は共和党だけではなく、民主党員の認識も共有している。党を超えた多くの人が、中国の政策を変える必要があると要求しています。
――中国に対するアメリカの脅威認識は超党派なのですね。
【オースリン】 それが米中関係の現実です。トランプ大統領は中国の貿易慣行を変えさせるべく、関税で貿易戦争に乗り出しました。今後どう展開するかは予断を許さない状況です。
アメリカが降参するかもしれないし、中国が貿易慣行の変更に同意するかもしれない。米中間にはまったく信頼関係がなく、少しパートナーシップがあるだけです。両国は互いをたんなる競合相手としてではなく、ますます敵国としてみるようになっています。
――私は今夏、『ニューヨーク・タイムズ』の名コラムニストであるトーマス・フリードマン氏にインタビューをしました。
そのとき彼は「トランプ氏は自分が何をしているかを理解したうえで判断している。そのやり方には問題があるが、中国に対して行なっていることは正しい」と述べています。
【オースリン】 私も、トランプ大統領は自分が行なっていることをわかっていると思います。彼の手法は、じつは非常に慎重で考え抜かれている。
もしトランプ大統領が突然、中国からの輸入品に25%の関税を課したら、世界中がパニックになっていたでしょう。アメリカの対中関税措置は、2年半をかけて段階的に行なうもので、中国が変われば追加で関税を課さない可能性もあります。
――トランプ大統領は中国を完全に追い詰めるのではなく、余裕を与えていますね。
【オースリン】 ファーウェイやZTEなどハイテク分野のように強くぶつかり合っている領域もありますが、全体的にトランプ大統領の対中政策をみると、実際は着実な政策だと思います。
更新:11月22日 00:05