2019年09月25日 公開
2019年09月25日 更新
(写真は福島香織著『ウイグル人に何が起きているのか』より)
中国の国家主席習近平。経済大国中国の実質トップだ。G20で来日もしたが、日本人にとってはアメリカのトランプほど知られてはいない。経済政策うんぬんの前にいったいどんな人物なのだろうか。『習近平の敗北』(ワニブックス)を著した福島香織氏がその知られざる素顔を明らかにする。
※本稿は福島香織著『習近平の敗北』(ワニブックス)より一部抜粋・編集したものです
2019年現在、中国の指導者は習近平です。中国共産党中央総書記にして国家主席。そして皇帝のような独裁者になろうとしている、ともいわれています。
私は直接会ったことがないので、直接会ったことのある数人に、「習近平ってどんな人ですか?」と聞いたことがあります。
習近平がまだ福建省の省長であったころに交流があったある日中関係者は「自信のない、気弱なところのある人だった」という印象をもっていました。
習近平が浙江省の書記に内定したとき、「ご出世ですね、おめでとうございます」とお祝いを言ったら、「あまりおめでたくないですね。ひょっとすると私はこれで終わりかもしれません」と、心細そうに言ったそうです。
浙江省の書記に習近平を強く推した人物は、江沢民の側近で曾慶紅という政界のフィクサーともいうべき政治家で、習近平は中央の権力闘争のコマに自分が使われるのだと脅えていたのではないか、とその人は感じ、意外に気の弱いところがあるのだな、と思ったそうです。
習近平の父親は習仲勲という建国八大元老の一人ですが、文化大革命のときは権力闘争に敗れて投獄されており、天安門事件のときも鄧小平に逆らったので不遇な目にあいました。
習近平自身も文化大革命時代は陝西省の北部に下放されました。そういう権力闘争の恐ろしさを目の当たりにしてきたからこそ、自分の身に待ち受けるリスクを予感していたのかもしれません。
もう一人は元上海市の学者官僚で江沢民の下で働いたことがある人物で、習近平のこともよく知っているそうです。彼は「習近平は一言でいえば"老好人"だな」と言いました。老好人は、直接的に訳せば"好人物"ですが、上海人がこの言葉を使うときはあまり良い意味ではありません。
実際、彼は「いい意味で言ったのではないよ。凡庸な人間だということだ」と外国人の私が誤解しないように補足して言いました。江沢民も凡庸な人物だといわれてきましたが、「江沢民は自分が凡庸であることを素直に認めている分だけましだ」と言いました。
更新:11月22日 00:05