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橋下徹 「リーダーには“よりましな案”を選ぶ考え方が必要」

2019年06月12日 公開
2024年12月16日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

リーダーには比較優位の思考が不可欠

――国政では、今年夏に参議院議員選挙が行なわれます。日本維新の会は与党公明よりも憲法改正に積極的といわれますが、選挙の争点の1つとなるでしょうか。

【橋下】 大阪都構想の住民投票再実施で維新と公明が完全に折り合えば、国政の勢力構図は変わりそうになく、憲法改正において大きなうねりは起きにくいでしょう。

もし公明が都構想に賛成の意を明確に示さなければ、先ほど述べたように、公明の衆議院の選挙区で維新は有力な候補をぶつけますから、公明候補者が落選し、維新候補者が当選すれば、改憲勢力に変化があるかもしれません。

しかし、維新は大阪都構想の実現を第一に考えて公明と折衝するでしょう。憲法改正も重要なテーマですが、いまの維新では大阪都構想が最優先事項です。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」とは言い得て妙で、あれもこれもと欲張ってしまっては、本当に成し遂げたいことができなくなってしまう。優先順位を明確にする必要があります。

――あくまで行動目標を忘れてはいけないのですね。

【橋下】 組織が実行しなければならない目標を1つに絞り込むのも、リーダーに求められる大事な役割です。犠牲の伴う目標の設定はリーダーにしかできません。

皆、犠牲を嫌がりますから。何かを実現するためには、何かを犠牲にする。その覚悟がリーダーには必要です。

また、何か新しいことをやろうとするときには、現状と比較して、「よりまし」なほうを選ぶ比較優位の考え方を採るべきです。新しい案の問題点ばかりをあげつらっては、現状がよくなりません。

僕が大阪都構想を提起したとき、メディアや学者はその問題点ばかりを指摘しました。もちろん、都構想に問題点がないわけではありません。

一方で、現状の大阪府・大阪市の体制にも山ほど問題点があるわけです。改革を行なう際、人は「変えることのデメリット」に注目しがちですが、同時に「変えないことのデメリット」にも目を向けるべきです。

組織のリーダーはこのような比較優位の思考に基づいて、現状を少しでもましなものにするための決断をしなければなりません。

――仮に大阪都構想が実現したとして、維新の次の行動目標は何になるでしょうか。

【橋下】 次の行動目標は次のリーダーが決めることです。それが憲法改正なのか、道州制なのかはわかりませんが、少なくとも1年や2年で達成できてしまう小さな目標では、組織のなかに大きな熱量は生まれません。

僕や松井さん、吉村さんがまさに人生を懸けて取り組んできた大阪都構想のように、リーダーが二世代、三世代にわたって完結するような壮大なテーマにする必要があるでしょう。

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