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辛坊治郎 「維新は夏の参院選での切り札を持っている」

2019年05月10日 公開
2024年12月16日 更新

辛坊治郎(大阪綜合研究所代表)

辛坊治郎聞き手:編集部(中西史也) 写真(大坊崇)

松井一郎・吉村洋文両氏の圧勝に終わった大阪ダブル選挙――。堺市長であり、大阪都構想に反対していた竹山修身氏が辞職し、池田市長には維新公認の冨田裕樹氏が就任するなど、維新に追い風が吹いている。関西を長年ウォッチしてきた辛坊治郎氏が、「大阪・春の陣」の深層と夏に行なわれる参院選の展望を徹底解説。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年6月号)、辛坊治郎氏の「本格始動した大阪都構想」より一部抜粋・編集したものです。

 

大阪市議選は維新の「奇跡的大勝利」だった

――大阪ダブル選挙では、自民党の問題が顕在化したのと同時に、維新の取り組みが実を結んだ要素もあったのでしょうか。

【辛坊】 松井氏、吉村氏の掲げた旗印が明確で、ぶれずに邁進してきたことは功を奏したと思います。

また前回の市長選から4年が経ち、維新の政策に反対する高齢者で亡くなった方が少なくなかった、という構造的要素も影響しているでしょう。2015年の大阪都構想の住民投票を否決に導いたのは、高齢者と生活保護層です。

西成区のように、生活保護受給者の割合が多い地域の票の出方を見ると、明らかに大阪都構想に反対の割合が高く出ています。これはこの皆さんが、大阪市が解体されると福祉の質が低下するかもしれないと感じたからでしょう。

――今回の選挙結果は、大阪都構想の住民投票を再び実施する後押しになるといわれています。

【辛坊】 大阪府知事・市長の残り任期4年間のうちに必ず、住民投票は行なわれるでしょう。私はこれまで、もし住民投票が実施されても可決される可能性はかなり低い、と考えていました。

しかし選挙期間中に潮目が変わり、大阪都構想が実現する芽が出てきた。『日本経済新聞』2019年3月31日付朝刊によると、大阪都構想への賛成は46.5%、反対は34.3%と、賛成が上回りました。

自らの看板政策である大阪都構想に対する支持が広がっていることは、維新にとって大きな自信になると思います。

――大阪府知事・市長のダブル選と同時に行なわれた大阪府議会・市議会選挙で維新は、府議会で半数を超える議席を確保したものの、市議会では単独過半数を獲得できませんでした。

【辛坊】 メディアのなかには、維新が大阪市議会において単独過半数に届かなかったことから支持が不十分だとする報道もありますが、これはまったくの間違い。そもそも大阪市議会というのは、どれだけ頑張っても過半数が取れないシステムになっているのです。

大阪市議会選挙は24区ごとの中選挙区制で、基本的に3人区(1つの選挙区から3人が当選する)です。そこで過半数を取ろうと思うと、1つの選挙区に2人以上の候補者を立てて、両氏を当選させる必要があります。

しかし大阪市は、自民、公明、共産、立憲民主、そして維新いずれの政党も一定の力をもっている。各会派が1人ずつ候補者を立てると、5、6人が擁立されるわけですが、1つの会派が2人の候補者を立てたら、共倒れのリスクがかなり高まってしまう。

今回の大阪市議選で維新は、定数83、過半数42のなかで、43人を擁立しました。これは端から過半数を取る気がないと思われたくないので、無理やり候補者数を合わせてきたのですが、本音では過半数を獲得できるとは思っていない。

ところが結果的に、維新は市議会で40議席を確保した。これは「過半数を割ってしまった」のではなく、大阪市の中選挙区制の仕組みにおいて「奇跡的な議席数を獲得した大勝利」といえます。

なぜこんな選挙制度が敷かれているのかというと、政令指定都市において単一会派に過半数を取らせたくなかったからでしょう。1つの会派に多数の議席を与えてしまうと、その力を背景に政治家の権力が大きくなり、役人のいうことを聞かなくなりますから。

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