2019年04月27日 公開
2022年06月23日 更新
ファイブアイズ以外の国にとっては、情報データが米英に取られるのか、中国に取られるのかの違いでしかなく、どちらに取られるのがよりましか、という問題になってくる。
日本や欧州の主要国はファイブアイズ側に付くという判断を下している。もちろん日独仏といった国々は、安全保障上アメリカとの同盟国であるため、これは当然の判断のように思える。
しかしこれまでインテリジェンスの世界では、ファイブアイズ対その他の国々、といった構図が実態であった。
私自身、昨年フランス情報機関が主催する会議に参加してきたが、彼らは米英に対する競争意識を隠そうとはしなかった。
さらに最近の報道でも、ドイツはファーウェイ社の機器からの情報漏洩の確実な証拠がないとして、国内の5G(第5世代移動通信システム)通信網の入札で同社を必ずしも排除しない方針を打ち出している。
このようにスノーデン事件以降、ファイブアイズ諸国と独仏のあいだにやや距離があるのもまた事実である。
とくにドイツでは、メルケル首相の携帯電話がファイブアイズ諸国に傍受されていたことが大きな話題となり、ドイツ政府は複雑な立場に立たされている。
これまでメルケル政権は、何度もドイツのファイブアイズ入りをアメリカに打診してきた経緯があるが、その要望は受け入れられていない。恐らくドイツ政府は今回のファーウェイ問題においても、ファイブアイズ諸国に何らかの妥協を迫る戦略があるのではないかと考えられる。
ただしアメリカをはじめ、ファイブアイズ諸国のほうも余裕がなくなってきている印象であり、サイバー分野以外でも日独仏との連携を希望しているように見える。
たとえば米空軍宇宙司令部は10年以上先を見据えた宇宙戦闘のシミュレーション(シュリーバ演習)を行なってきたが、従来ここに参加を許されていたのはファイブアイズ諸国だけであった。しかし2016年から独仏、昨年から日本も招待されるようになっている。
日本政府は昨年12月に「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について」を発表しているが、そのなかでもやはり宇宙・サイバー領域の強化が謳われている。
日本は宇宙についてはそれなりの予算を投じ、その技術も高いが、サイバーについては甚だ心許ない。
アメリカのサイバー対策費は日本の40倍だそうだが、アメリカの国防予算が日本の14倍程度であることを考えると、日本のサイバー対策は低調だといわざるをえない。
サイバー・インテリジェンスについていえばさらに低調であり、今後は何らかの戦略や指針を立てていかなくてはならない。これは既述した、サイバー空間を制するための条件、②産業・政策的優位性、に当たる。
そしてそのような方針を基に、ファーウェイ問題への対応や、今後のサイバー分野におけるファイブアイズ諸国との連携をめざしていくべきだろう。
私は9年前にある雑誌でファイブアイズについて初めて論じ、それら諸国と協力していくべきだと書いたが、いまでもその考えは変わっていない。
さらに、今後サイバー空間が米中に二分されるとすれば、やはり欧米のプラットフォームを使用していく以外の選択肢はないように思える。
いずれにしてもファーウェイ問題は産業上の問題であると同時に、政治や安全保障上の問題でもあるという原則を踏まえた上で、今後の展開を見守っていく必要があろう。
更新:11月23日 00:05