2019年04月27日 公開
2022年06月23日 更新
※画像はイメージです。
ファーウェイを巡る一連の騒動など、米中の対立が深刻化している。インテリジェンスに詳しい日本大学の小谷賢教授は、両国の確執は軍事・経済のみならず、サイバーインテリジェンスにまで及んでいる、と指摘する。米中の攻防、そして大国に挟まれた日本が取るべき指針を述べる。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年5月号)に掲載された「ファイブアイズ諸国と連携せよ」より一部抜粋・編集したものです。
米中「新冷戦」で問題になってくるのは、サイバー・インテリジェンスの分野だ。報道によると、中国の情報機関は中国製の通信機器のバックドア(正規の手続きを踏まずに内部に入ることが可能な侵入口)によって、さまざまなデータや機密情報を収集してきたものと見られている。
アメリカ政府の焦りはもちろん、これらの機器によって情報を奪われることにあるが、恐らく裏の理由としては、米英が以前ほど自由にサイバー空間でデータ収集ができなくなっていることも関係しているものと考えられる。
両国ではスノーデン事件を受け、情報機関の監視がいきすぎではないかとの批判が挙がっていた。その結果、米英ではそれぞれ規制法が成立し、両国の情報機関が以前のようにサイバー空間での無差別なデータ収集がやり難くなっている。
また昨年5月には、フェイスブックから脱法的にデータを収集し、それを利用していたイギリスの調査会社、ケンブリッジ・アナリティカが廃業に追い込まれたことからも、いまや欧米においてこの種のデータ収集に厳しい目が向けられるようになっている。
それに対して中国では法律によって、国家安全保障上の目的であれば、サイバー空間でも自由にデータを収集できるようになっている。そうなると将来的にファイブアイズのサイバー空間における比較優位は失われていくだろう。
20世紀のアメリカの覇権を支えた源泉は、強大な経済力とインテリジェンスから生み出される圧倒的な軍事力にあったといってよい。
インテリジェンスについて語られることは少ないが、戦後、アメリカはファイブアイズ諸国と協力することで、世界中の情報を収集することができた。
アメリカはソ連に対しても、イギリス以外のヨーロッパ諸国に対しても、インテリジェンスの世界で優位に立ち続けてきたのである。
更新:11月22日 00:05