2019年04月27日 公開
2022年06月23日 更新
しかしいまや中国がこの経済・情報優位を脅かしつつある。昨年出版された持永大他『サイバー空間を支配する者』(日本経済新聞出版社)によると、サイバー空間を制するためには、①技術的優位性、②産業・政策的優位性、③数的優位性、を確保する必要があるという。
このなかで③の数的優位性はすでに中国側にあり、①の技術的優位性はややアメリカ有利、②産業・政策的優位性は拮抗している状況だ。
アメリカが技術的優位性を確保するためには、何としても技術情報の流出を防ぎ、かつ信頼できる他国と研究開発を行なう必要がある。
そしてそのためには、中国が行なったようにまずサイバー戦略を制定し、それを基に個別のサイバー政策を進め、そこに関わる産業を活性化させていかなければならない。
いまアメリカがファーウェイ社に対して行なっている措置は、当面の情報流出と中国企業の攻勢にストップをかけることだ。そうやって時間を稼ぎながら、政策主導で何とかアメリカのサイバー覇権を維持しようと試みているのだろう。
もちろん中国側から見れば、何とかサイバー分野でアメリカに追いつき追い越したいのであり、すでに高い技術力を有するロシアと手を組んでいる。
そうなるとアメリカ単独、もしくはファイブアイズ諸国だけで中露連合と渡り合っていくのはなかなか厳しいだろう。
そこで国際政治の定石として、かつての勢力均衡の原則が頭をもたげてくる。勢力均衡とは覇権国を脅かす挑戦国の台頭に対して、他国と同盟を組んでそれを乗り切ろうとするものだ。
イギリスはかつてのナチス・ドイツに対抗するためにアメリカと手を組み、アメリカはソ連に対抗するために毛沢東の中国と手を組んだ。いまのアメリカが中露に脅かされているとすれば、当然組むべき相手を模索することになる。
アメリカから見た場合、サイバー・インテリジェンスの分野で頼りになるのはファイブアイズ諸国、そしてイスラエルあたりだろうが、技術的優位や数的優位を求めるのであれば、さらなる同盟国が必要になってくる。
更新:11月23日 00:05