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一般人の情報も盗られる?スノーデン氏が危惧した「ファイブアイズ」とは何か

2019年04月25日 公開
2022年06月23日 更新

小谷賢(日本大学危機管理学部教授)

小谷賢※画像はイメージです

アメリカは長年、インテリジェンスの分野において他国の追随を許さなかった。その力の源泉となったのが、英語圏5カ国「ファイブアイズ」による情報共有である。ところが近年、中国がサイバー分野で急速に力をつけており、アメリカを脅かしている。ファイブアイズとはどういった組織なのか、米中新冷戦はいかなる様相を見せるのか――。インテリジェンスに詳しい日本大学の小谷賢教授による分析。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年5月号)に掲載された「ファイブアイズ諸国と連携せよ」より一部抜粋・編集したものです。

 

泥沼のファーウェイ問題

2018年10月4日、アメリカのペンス副大統領は歴史的な演説により、それまでの曖昧な対中政策から、政治・経済・軍事面における中国との対決姿勢を明らかにした。

そしてその先鞭として槍玉に挙げられたのが、中国のファーウェイ社、ZTE社といった通信会社である。

さらに本年2月16日のミュンヘン安全保障会議においても同副大統領が、ファーウェイ社はアメリカにとっての安全保障上の脅威であるとして、再び批判しているが、これに対してファーウェイ社はアメリカ政府の措置が違憲であるとして提訴に踏み切った。

このようにファーウェイ問題は泥沼の様相を呈しているが、今回はこの問題の背景について考察を進めていきたい。

まず昨年から世界情勢は大きく転換している。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを契機に始まったテロとの戦いもようやく一段落しつつある。

トランプ政権が昨年12月にはシリア、さらに今年1月にはアフガニスタンからの米軍の完全撤退を宣言していることからもそれは明白だ。

そしてその代わりに再び台頭してきたのは、伝統的な国と国との安全保障や経済的優位をめぐる戦いだ。

ここ数年のあいだに、欧米とロシア、中国とのあいだでの所謂「新冷戦」の傾向が顕著になりつつあるが、その最前線はいまや、核兵器や軍事力をめぐる競争から、サイバーや宇宙、インテリジェンスをめぐるものになってきている。

とくに中国はサイバーと宇宙政策を最優先事項としている。なぜなら陸海空軍の戦いは、技術や訓練の蓄積が決定的に重要であるが、いまだにコピー技術から脱却できない中国人民解放軍はとても米軍のハイテク兵器には太刀打ちできないのが現状だからだ。

しかしサイバー分野であれば、新たな分野であるがゆえに一発逆転が可能な領域であり、この分野を制すことができれば、陸海空戦は戦わずして勝利を収めることも可能となる。

まさにこれは中国人が好む孫子の戦略観だ。昨年翻訳されたディーン・チェン著『中国の情報化戦争』(原書房)も、このような中国の安全保障戦略を指摘しているのである。

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