2019年04月30日 公開
2020年07月21日 更新
アメリカの“ハイテク企業の聖地”ともいえるシリコンバレーでエンジニアとして働く酒井潤氏。彼はもともと、大学日本代表に選出されるほどサッカー一筋の人生を歩んできた。何が酒井氏の人生を変えたのか。日米の働き方の違いとは。時代の最先端を走るエンジニアが語る。
取材・構成:中﨑史菜
※本稿は『Voice』5月号、酒井潤氏の「なぜシリコンバレーで働くのか(上)」を一部抜粋、編集したものです。
昨今は、「好きなことで生きていく」「好きなことを仕事にする」ことがよいことのように語られています。
しかし、本当にやりたいことの実現のために、「やりたくないこと」をまず仕事にして、お金を貯めることも1つの選択肢だと考えています。
そもそも、「仕事とは誰かのやりたくないもの」であり、人生には我慢する時期が必要なのではないでしょうか。
それこそ、日本の体育会的な考え方だと批判されてしまうかもしれませんが、人がやりたくない仕事、あるいはやれない仕事をやるからこそ、お金が生まれるのです。
とくに最近感じているのは、「自分の取り柄」に人生を引っ張られすぎている人が多いことです。
「これこそ、自分がやるべきことなんだ」と思い込み、「やればできる」という言葉をまるで美徳であるかのように語る。たんに現実から目を逸らしたいのかもしれませんが、それは危険を孕むものです。
たとえば、「塾やサッカースクールをやりたい」「これこそが私のやるべきことなんだ」といって、お金集めに必死になっている人がいます。結果を出さないといけないと焦るばかりに、指導も厳しくなる。
しかし、資金に余裕があれば、「本当に子供たちのことを思った指導」ができると思うんです。精神的余裕をつくるためにも、お金を含めた現実的なことを冷静に考えて判断する必要があります。
現在の私は、シリコンバレーで子供たちにサッカーを教えたり、サッカーの動画アプリを開発したりと、結果的に「好きなこと」が思う存分できています。
発展途上国からアメリカへ来て働いているエンジニアは、数年分の給与で、母国で悠々自適に過ごすことができるといいます。
日本では年収600万円しか稼げないエンジニアが、アメリカに来ることで5倍の3000万円を稼げるようになるとしましょう。数年で1億円貯まりますが、それを日本にもち帰っても、1億円の価値しかありません。
しかし、マレーシアなど物価の低い国へもっていけば、それがさらに約3倍の価値になるのです。
アップルで働くとあるエンジニアの母国では、アイフォン1台の値段が平均年収くらいだといっていました。ベトナムの友人は、40歳くらいまで働けばリタイアして帰国できると話していますし、エジプトでは1食あたり50円ほどで食べられるので、スプランクで3年くらい働けば、その後、働かずに好きなことをして生きていけます。
更新:11月23日 00:05