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橋下徹「大阪都構想は、徹底的に考え抜かれた“実行プロセス”だ」

2019年04月12日 公開
2023年07月12日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)


(撮影:的野弘路)

<<4月7日に投開票された大阪知事・市長W選。結果は「大阪維新の会」松井一郎氏と吉村洋文氏の勝利となった。

元代表であり、大阪府知事・大阪市長を務めた橋下徹氏による発刊間近の新著『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』(PHP新書)より、一部を抜粋してお届けする。>>

 

「実行プロセス」を考え抜いてきた8年間

僕は今、近日発刊の自著『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』(PHP新書)を執筆中です。これは、僕の8年間の政治経験を通して、いかに物事を「実行」していくか、その具体的な考え方ややり方を説いた書籍になります。

詳しくは自著にて解説していますが、物事を実行するには、まずは大きな方針・ビジョンを立てることです。これは抽象的なものです。

そしてこれを具体化し実行するプランを作ります。そのためには組織体制を整えなければなりません。

具体的な実行プランを作成したら、今度はそのプランに基づいて実行していくことになりますが、そのときにも実行するための組織体制を整える必要があります。

案・プランと組織体制は常にワンセットです。

これが大きな方針・ビジョンを実行するプロセスであり、僕の大阪都構想は、ここに選挙・法律制定・住民投票というものがさらに入ってきました。

僕はこの実行プロセスを頭に描いて、8年間の政治活動をやってきたつもりです。政治家や実務家は、学者やインテリたちのように、アイデアを口にするだけではダメなのです。実行しなければなりません。そのためには実行プロセスをたどることが必要なのです。

組織も何もないところから、一から政党を作り、議会で議席を獲っていくのは、本当に大変なことです。普通は1議席でも獲れれば万歳ものです。さらに既存の政党の力を借りずに自分たちの力だけで、しかも既存の政党相手に知事、市長のポジションを選挙で獲ることも普通ではあり得ないことです。

僕ら大阪維新の会は、僕が関与したものだけでも2000回を優に超える街頭演説やタウンミーティングを繰り返し、各メンバーもそれぞれ地元で地道に政治活動、選挙運動を進めてきました。

そして府議会・市議会で多数の議席を獲り、知事・市長のポジションを獲り、国会で議席を獲りということを積み重ねて、大阪都構想の実行プロセスを進めてきたのです。

4月7日に投開票が行なわれた、松井一郎さん、吉村洋文さんの大阪W選挙も、もちろんそうした流れの中にあります。

僕にとっては、一弁護士だった僕が大阪についての自分の思いを実現するための、いわば住民運動の感覚です。すなわち住民の力で大阪を変えようという住民運動です。

しかしメディアやインテリたちは、選挙を通じて議員議席や知事・市長権力を獲得していく住民運動に対しては、物凄く毛嫌いをしますね。

政党を作って、知事、市長のポジションにあるだけで、一般の住民とは異なる悪魔のような権力者だという扱いをしてきます。

その一方で、彼ら彼女らは、「住民の力で政治を動かそう」とよく主張していますが、彼ら彼女らが応援する住民運動は、多くの場合「デモ」ですね。

原発の問題でも沖縄の問題でも、とにかくデモをしている人たちのことを盛んに報道して、「こんなにデモをやっているのに、政策を見直さないのはおかしい!」「若者がデモを起こして素晴らしい!」「数人の住民が立ち上がって素晴らしい!」と拍手喝采を送ります。

僕もデモは否定しません。しかし民主主義の本流は選挙を通じて多数の議席を獲ったり、権力を獲ったりして、世の中を変えていくことだと思います。

たとえ数万人のデモでも、それで国の方針が決定されるとすれば、そのほうが非民主主義ではないでしょうか。1億2000万人という日本の人口のうちのわずか1万分の1くらいの人数のデモで、日本の方針が決まったら、民主主義とは言えなくなります。

デモは、あくまでも選挙を通じた民主主義を補完するものであり、デモをそれだけ大事にするのであれば、それと同じくらい、選挙を通じて世の中を変えようとする運動も大事にしなければならないと思います。

メディアやインテリたちは、僕のことを「選挙至上主義」などと批判をしてきましたが、自分の理想に向かって世の中を変えるため、政治を動かすには選挙で議員議席や知事・市長を獲るしかありません。

デモで政治を動かそうとするより、選挙や投票で政治を動かそうとするほうが、はるかに民主的だというのが僕の持論です。

大阪都構想は最終的に住民投票で否決されました。そこに至る過程において、「橋下は独裁だ! 強権だ! 横暴だ!」と散々批判を受けてきましたが、僕は民主主義の正道の実行プロセスを踏んできたと自負しています。

口で政治行政に文句を言ったり、理想の世の中を語ったりするのは誰でもできる。しかし、本当に大阪の変革を実行するには、自分が政治家としてやってきた方法以外にはない、と今でも確信しています。デモでは決して実行できなかった。僕は大阪都構想の中身にもこだわりましたが、実行プロセスにもこだわってきたのです。

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