2019年03月13日 公開
2022年12月28日 更新
【幸田】 テンソルの社員は、修士号はもちろん、博士号をもっている方も多い「稼げる頭脳派集団」ですね。
藤本さんご自身は、データマイニング(データ解析を大量のデータに適用することで知識を取り出す技術)のコンペティションで世界4位(2000年)を取っています。
【藤本】 1位になりたかったんですけどね(笑)。私の力不足で。
【幸田】 藤本さんは40年以上にわたってAIの研究をしていますけど、そこまで惹き付けられる理由は何ですか?
【藤本】 知能の本質を理解することが楽しいからだと思います。
私は子どものころから、知能・知性とは何だろう、自分の意識とは何だろう、それは人間にしかないのか、それとも無生物にもあるのか、ということに興味がありました。
いまビジネスでAIを扱っていますが、そうした好奇心が仕事の原点です。
【幸田】 私も好奇心旺盛な人間ですが、小説を書くためにAIについて取材を重ねて思ったのが、AIを知ることは人間を知ることなのではないか、ということです。
人間の頭脳構造や思考の決定がどう行なわれているのかは、まだほんの数%しか解明されていません。
『人工知能』の主人公・凱は、携帯電話会社でのアルバイトや大学の講義からAIに興味をもつわけですが、世の中に退屈している人間が、ひょんなことから知性の謎に出合うことを通して、読者に人工知能の世界を疑似体験してほしい、という思いがありました。
【藤本】 AIの仕組み自体、人間の構造を元にしています。脳の神経回路に近い仕組みをコンピュータ内につくることで、人間と同じような機能をもとうとするニューラルネットワークが長年、研究されてきました。
現在の「第3次AIブーム」で注目を集めているディープラーニング(深層学習)は、そのニューラルネットワークの発展型なのです。
【幸田】 人間の脳をいかに人工的につくり上げるか、コンピュータのなかでシミュレーションしているわけですね。
近年よく耳にするディープラーニングは、その神経網の階層を限りなく重ねていって、より精度を高めたものです。人間が与えたデータを、機械が自動で学んでいく技術が発展しているのです。
今後は人工知能の進化にともなって、人間の解明がパラレルで進んでいくのではと思っています。「人間っていったい何?」という根本的問いを私たちは投げ掛けられている。
現在は人工知能に対する期待が先行している過渡期にありますが、いずれは人間の情感に関わる「人工感情」が誕生する時代が訪れるのかもしれません。
更新:11月13日 00:05