2019年03月06日 公開
2019年03月06日 更新
――IWCを脱退した日本は今後、捕鯨問題においていかに国際社会と関わっていくべきでしょうか。
【八木】 IWC以外の国際組織の設立を、アジア主導でめざすべきだと思います。
IWCだけではなく、国際連合をはじめ、いま存在する国際機構のほとんどが第2次世界大戦で勝利した連合国主体の組織です。
戦後70年以上たっているのに、いまだに日本は戦勝国のルールに従うだけで、自らの主張を広めることができない。現状の組織の在り方で議論を進めるには限界があります。
日本と領土問題、歴史問題でしばしば対立する中国やロシアは、じつは捕鯨には反対していません。近年、存在感を増す両国の発言力を生かして協力する余地はあります。
欧米に追従するのではなく、世界と対等に対話ができることが真のグローバリズムです。日本がその第一歩として、フェアな議論ができる土俵づくりを捕鯨国の代表として担うべきではないでしょうか。
――日本は捕鯨のみならず、従軍慰安婦など歴史認識をめぐる問題についても、情報発信の不足がしばしば指摘されます。世界で繰り広げられるプロパガンダに対し、日本はいかに対応すべきでしょうか。
【八木】 従軍慰安婦の問題については、欧米の事例を挙げて軍と性の問題を訴え、国際社会全体を議論に巻き込む必要があります。戦時における女性の性被害は、日本だけではありません。
たとえば、ベトナム戦争に派兵された韓国軍兵士と現地ベトナム人女性とのあいだに生まれたライダイハン(ベトナム語でライは混血、ダイハンは大韓の意味)の多くは、韓国兵による強姦によって生まれたといわれています。
また、第2次世界大戦において米軍の兵士たちは、フランスをナチスドイツから解放した勇敢な英雄として伝わっていますが、ノルマンディー上陸作戦の際に米軍によって多くのフランス人女性がレイプされたことを、ウィスコンシン大学歴史学の教授が発表しています。
さらに沖縄においても、幼少の多くの子供たちが米軍によってレイプされ命を落としていることが、アメリカ『タイム』誌で取り上げられたことがあります。
日本が従軍慰安婦制度をつくったのは、性病を蔓延させない衛生管理としての側面がありました。施設をつくって厳正に管理した結果、「証拠を残した」日本だけが現在も非難され続けている。
これらもまた発信力やプロパガンダの問題であり、日本政府は事態が大きくなる前に「スピード感をもって海外発信対策」をすべき状況にあると思います。
そして対韓国ではなく「戦時中における世界中の女性の性被害」に焦点を当てるべきではないでしょうか。
日本政府として、捕鯨問題のみならずさまざまなプロパガンダに対して、一度発表したから良いではなく、国内外に向けての発信を継続することが鍵だと思います。
更新:11月23日 00:05