2019年03月04日 公開
2021年07月27日 更新
もちろん文政権の左派的傾向は日本への極度な反日姿勢を生み出す主因であるが、米朝首脳会談は北朝鮮をめぐる軍事的緊張を大幅に低下させており、文政権の冒険的ともいえる日本への反日姿勢を可能とする遠因となっている。
トランプ大統領と金正恩が直接会談したことで、本来は北朝鮮外交で主導権を取りたかった文政権も現在では完全に米国外交にお株を奪われたかたちとなっている。
北朝鮮側も米国との直接対話を第一に重視することは当然のことであり、米国を交渉の場に引きずり出すための北朝鮮の駒としての文政権の役割は事実上終わったといえるだろう。
本来の国家の格としては、米国が対峙すべきは中国、韓国が対峙すべきは北朝鮮であったが、トランプ大統領やポンペオ国務長官が北朝鮮との直接的交渉に乗り出すならば、朝鮮半島情勢における韓国の位置付けは演劇における脇役から植木鉢以下の存在へとなってしまう。
文政権は厳しい政治状況のなかで外交上の手柄がほしい状況であるが、北朝鮮問題からはもはや独力でそれを望めるような環境ではない。
一方、日本政府は対北朝鮮外交から実質的に外された存在となっており、韓国にとってはほぼノーリスクで挑発できる相手となっている。まして、歴史的にも因縁があるちょうど良いプロレス相手といえるだろう。
また、日本政府は冒頭のように日米韓の協調体制が、東アジア情勢、詰まるところ米国による東アジアの秩序形成に不可欠であるという認識をもっているように見える。
そのため、文政権が日本政府をどれだけ侮辱したところで、日本政府は米国から見て行儀良い忠犬として振る舞うことはすでに織り込み済みだ。
日本政府は昨年末に徴用工問題が本格的に火を噴いたあとになってもほぼ遺憾の意を繰り返すだけであり、それどころか国会議員らが訪韓団を形成するなど相手国政府に真逆のメッセージを事実上送り続けている。
自民党の部会では韓国制裁が盛り上がっているそうだが、いままで何の準備も進めてこなかったということのほうが日本政府の不作為についての惰弱な姿勢を示してしまっているといえるだろう。
日韓関係の歪さに関して、韓国側が日本の政治に対してさまざまなルートで影響力をもっていることが問題だ、という文脈で語られることが多い。
しかし、本当の問題はそもそも米国の目を意識するあまり、「日本の国益とは何か」という大前提を欠いたものになっていることにある。
もちろん、東アジア情勢に強い影響力をもつ米国の意向を気に掛けることは必ずしも間違いではない。
ただし、米国は世界全体を相手にしており、東アジアで発生するこの程度の問題に本腰を入れて対処するほど暇でもない。
また、トランプ政権は昨年末に、中東地域の専門家であったマティス国防長官が辞任し、今後はインド太平洋地域における中国対策に本腰を入れる可能性がきわめて高まっている。
米国は日韓のあいだで発生する小競り合いなど関わりたくないのが本音だ。
したがって、米国が韓国疲れを起こして日本側の立場に立つ可能性も若干残されているが、米国の立場としては原則として日韓双方の自制を必然的に求めることになるだろう。それが米国の国益にかなった対応だからだ。
更新:11月14日 00:05