2019年01月21日 公開
2019年01月21日 更新
カルロス・ゴーン日産前会長を巡る一連の騒動は、自動車業界に大きなインパクトを与えた。ゴーン氏なきあとの日産が生まれ変わるための戦略、そして日本の自動車業界全体がめざすべき活路について、立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が述べる。
※本稿は『Voice』2019年2月号、田中道昭氏の「ゴーン解任で変わる自動車産業」を一部抜粋、編集したものです。
日産の次のリーダーとしての経営者には、大胆なビジョンを指し示すトップダウンリーダーシップとともに、資本の論理のなかにおいては、高度な調整能力が求められる。
これらは通常は二律背反的な資質であり、両者に優れたリーダーを日産の上層部から選定するのは容易ではないだろう。
別の表現を使えば、カリスマ性のみならず、使命感や危機感に満ち溢れていた、“全盛期”のゴーン前会長以上のトップリーダーなど簡単に見つかるものではない。
そして、ルノーからの出資比率が43・4%という資本の論理において、引き続き欧州や中東アフリカ偏重の販売体制で世界戦略は日産に依存するしかないなかで、ルノーが日産を手放すことは考えにくい。
だからこそ、日産の社員には、ここで勇気をもって声を上げてほしい。
違和感を覚えていることがあれば発言してほしい。
日本国内で第2位になる潜在力を十分にもちながらも、国内シェア第5位に低迷しているという事実が、日本人社員の焦燥感や無念さを表象していないのだろうか。
頑固なまでに「走りの質」を追求してきたはずだった日産スカイライン。筆者の大学時代からの親友の憧れでもあった。北米で販売されているインフィニティをそのままスカイラインとして販売しているという事実ほど、日産日本人社員にとって屈辱的なことはないのではないだろうか。
社員自らがボトムアップで日産のグランドデザインを示してほしい。
ゴーン前会長の解任を契機として、日産の企業DNAをスタートアップ企業のようなスピーディーなものに刷新してほしい。企業DNAの刷新には、“若いDNA”からイノベーションを起こすことが効果的だ。
そして、ゴーン前会長の経営の“功”の1つである人材のダイバーシティーを、多様性や一人ひとりの個性を、イノベーションをボトムアップから生み出すことに活かしてほしい。
そこにゴーン前会長解任の大義と日産の活路があるのではないだろうか。
更新:11月21日 00:05