2018年04月10日 公開
2022年06月09日 更新
自動車産業は国際政治と表裏一体であり、中国および欧州主要各国政府のEVシフトが日本の自動車メーカーにも大きな影響を及ぼしている。中国政府は、国家産業政策として先に述べた「自動車産業の中長期発展計画」を実行に移し、さらにはNEV法(新エネルギー車の販売比率を定めた法律)を強力な手段としてEV化を推し進めている。
中国ではすでにEV完成車メーカーが60社以上も存在しているといわれており、まさに群雄割拠の状況にある。従来のガソリン車と比較すると、EV車では吸気系・排気系が不要となり、エンジン系統での技術力や実績が無用となる。モデュール化、電子化、水平分業化が進み、多くの完成車メーカーが乱立していること自体が、自動車産業への参入障壁が崩れ、業界構造がすでに崩壊していることの証左だろう。
「自動車大国」から「自動車強国」への躍進を目論む中国としては、自動車先進国への輸出という具体的な目標まで提示したなかで、日米欧の自動車メーカーを超えることが必要となる。
エンジン車では自動車先進国には勝てないと認めていることから、中国政府はエンジンのないクルマである「EV化×自動運転化」を先行して進めていくことで、次世代自動車産業の強国になることを目論んでいるのだ。
このような背景もあって、中国では、北京や上海などの大都市圏において、ガソリン車に対して発行するナンバープレートを抽選制として制約を設ける一方で、EV車に対するさまざまな優遇措置が講じられている。
中国資本の自動車メーカーや電池メーカーへの手厚い優遇策もかなりあからさまだ。EV車メーカーが中国政府から補助金を受け取るためには、「ホワイトリスト」登録企業(バッテリー模範基準認証の取得企業)から電池を調達することが条件となっているが、現時点では外資で同リストに登録を果たした企業は存在しない状況だ。
(本記事は、4月10日発売の『Voice』2018年5月号、田中道昭氏の「次世代自動車産業の覇権を狙う中国」を一部、抜粋したものです。本稿を含む『2022年の「自動車産業」―異業種戦争の攻防と日本の活路(仮題)』が、PHPビジネス新書から5月中旬に刊行予定です)
更新:11月23日 00:05