2018年12月14日 公開
2024年10月28日 更新
では、これから日本企業が第4次産業革命で成功するにはどうすればいいのか。ポイントは3つある。
第1に、データ収集の仕組みをつくることだ。日本企業がアメリカや中国の企業の後塵を拝しているのは、言語人口の問題である。IoTデータなら勝てる仕組みをつくることは可能で、製造業、小売業、コネクテッドカーなどで勝利する場面が想定される。
第2は、実績主義から脱却したビジネスモデルの飛躍的変革である。価値を生み出すために新たな力を採用する、勇気ある経営判断が必要だ。
第3は、「オープンイノベーション」である。企業1社でできることは限られており、今後は競争力よりも協調力勝負になってくる。
私が理事長を務める一般財団法人インターネット協会に「オープン・イノベーション・コンソーシアム」を立ち上げた。
これは、民間資金を研究開発費としてプールし、企業から出口の見える共同研究開発プロジェクトを組成するもので、旧制7帝大、慶應と早稲田、東工大、一橋大にまず加入してもらったところだ。
大企業に加え、全国の特色ある中小企業と大学の研究室とをマッチングするための仕組みづくりである。
ドイツの国立フラウンホーファー研究機構は、日本の地方大学の数に相当する67拠点を有し、その70%に当たる研究開発資金を大企業と中小企業が半分ずつ負担している。
この自主的な研究開発志向が功を奏して、ドイツはインターネットの登場後、GDPが20年間停滞していた日本と異なり、2倍近い経済成長を実現している。
日本のGDPはかつて、世界1位のアメリカに肉薄するもインターネットの登場と共に引き離され、中国の台頭と共に第2位の地位も明け渡すこととなった。この差はますます離れていくのだろうか?
日本はデジタル化がほとんど実施されていない。ここを変えれば一気に勝ちへと転じることができる。日本は平和と安定を求める風土があり、困難を克服すると変化を求めなくなる。
したがって戦乱の世のあとは、世界で最も安定した封建社会をつくることで勝利し、それを守ることで第1次産業革命に敗北。第2次産業革命には勝ち、従来型の製造業に固執したばかりに第3次産業革命に敗れた。そしていま、第4次産業革命の最中にいる。
巡回的に、次は勝利の時代を迎える可能性がある。勝利とは、2030年にGDP1000兆円を実現することである。そのためには、全産業のデジタル化が必須だ。
1994年にインターネットの商用化が始まり、インターネットを基軸とした産業のデジタル化を実現したのは、情報通信産業だけである。
1985年、情報通信産業はNTTの民営化と競争原理の導入という通信の自由化に踏み切った。この試練の結果、情報通信産業は30年で市場規模が40兆円から100兆円になり、NTTは独占市場を失ったものの、売り上げは5兆円から11兆円に成長した。
NTTの音声(電話)事業の売り上げが、30年で83%から18%に低下したにもかかわらず2倍を超える事業規模に到達したのは、インターネットを基軸としたデジタル化への転換に成功したことにほかならない。
KDDIはIoTをリードするソラコムを自社グループに取り込み、ソフトバンクは移動通信会社を新規上場させた。日本が世界に先駆ける5Gの準備は、急ピッチで進んでいる。
繰り返すが、やるべきことは、この世界最高水準の5Gを中心とする情報通信インフラを最大限活用し、IoT、ビッグデータ、AIを駆使した全地域でかつ全産業のデジタル化によって新たなビジネスモデルへと転換するだけである。
更新:11月06日 00:05