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村田晃嗣 日本の明確な意思を示す防衛費の増額を

2018年12月09日 公開
2022年07月08日 更新

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

北朝鮮問題で長期的に果たせる役割

北朝鮮の非核化については、非核保有国である日本の役割は限定的にならざるをえない。

さらに、日朝間には、核とミサイルだけでなく拉致問題という難題が横たわっている。拉致問題については、家族の価値を重視する米内陸部のトランプ支持層に積極的に働き掛けるのも、一案だろう。

これらの諸問題が解決されれば、両国は国交正常化に向かい、その後に日本が北朝鮮に経済協力を行なう――これが2002年に小泉純一郎首相と金正日委員長とのあいだでまとまった日朝平壌宣言の描くシナリオである。

経済協力の金額は明示されていないが、1965年の日韓国交正常化の際に、日本は有償・無償を合わせて5億ドルを韓国に提供した。これと相当の金額となると、100億ドルとも200億ドルともいわれる。

これだけ大規模の経済支援を北朝鮮に提供する意図と能力の双方を有する国は、世界中で日本と中国と韓国しかない。アメリカには能力はあるが意図はなく、ロシアには意図があっても能力がない。

しかも、北朝鮮にとって、日本からの経済協力がいちばん安全である。できれば、中国にこれ以上依存したくないし、南北統一を睨めば、韓国に借りをつくらないほうがよい。

北朝鮮問題で、いたずらに「日本蚊帳の外」論を嘆くのではなく、短期的には出番が少なくとも、長期的には重要な役割を果たせるとの覚悟のもとで、悪化する日韓関係に冷静に対処しつつ、アメリカとの協力を強化することが、日本にとっての正攻法であろう。

万が一、トランプ大統領が「第二のカーター」になろうとしても、「反対です、大統領」と日本がいえるには、責任の分担と長期的で多角的な視点、そして、忍耐が必要なのである。

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