2018年12月09日 公開
2024年12月16日 更新
トランプ政権は在韓米軍の削減、撤退を進めるのか。そのとき日本の進路は。同WEBサイト「村田晃嗣 在韓米軍撤退の悪夢『トランプを第二のカーターにしてはならない』」に引き続き、同志社大学の村田晃嗣教授が、カーター政権時との安全保障環境の違いや米内政をもとに分析。※本稿は『Voice』2019年1月号、村田晃嗣氏の「在韓米軍撤退の悪夢」を一部抜粋、編集したものです。
カーターは軍部、議会、メディア、世論の反対に直面して、在韓米軍撤退政策を放棄した。大手メディアが何といおうと、トランプには「私のメガホン」と呼ぶツイッターがあるし、気に入らない報道は「フェイク・ニュース」と無視すればいい。
しかし、先の中間選挙では、予想どおり民主党が下院の多数を制して、「分割政府」が出現した。大統領の議会対策は、これまでよりも慎重にならざるをえない。在韓米軍の削減や撤退となれば、短くても数年を要し、予算措置も必要になる。
まして、軍部は反対するであろう。ボブ・ウッドワードの新著『恐怖の男 トランプ政権の真実』(伏見威蕃訳、日本経済新聞出版社、2018年)によると、「国家安全保障の旧体制が1年目のトランプを打ち負かした」「例外は、中国に対する強硬な姿勢と、国際問題で中国がほんとうのライバルだと認識したことだった」と、大統領首席戦略官だったスティーブ・バノンは考えていたという。
さらに、トランプ支持層には、退役軍人も少なくない。アフガニスタン、イラクと二つの大きな戦争に従軍し、負傷し、戦友を失った者たちである。
自分たちが適正に評価されていない、処遇されていないという不満が、トランプ支持につながっている。軍部の意向にあからさまに反した在韓米軍の削減や撤退には、こうした人びとからも理解を得にくいのではないか。
ロシアゲート事件の捜査などで守勢に立つトランプにとって、在韓米軍の性急な削減や撤退に、こうした抵抗を乗り越えてまで提唱するほどの価値はあるまい。
更新:12月23日 00:05