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「天皇」はエンペラー、キング、皇帝、王のいずれか?

2018年10月22日 公開
2022年12月15日 更新

倉山満(憲政史研究家)

では、「皇帝」と「王」の違いは何か

次に、皇帝と王です。この2つがどのような存在なのかを見ておきましょう。

秦の王・政がチャイナの戦国時代を統一して、始皇帝を名乗ったのが皇帝の始まりです。秦の始皇帝です。始皇帝といういいかたそのものが、それを説明しています。

チャイナの神話(まったくもって史実ではない)では、3人の皇(すめらぎ)と5人の帝がいたことになっています。その8人を「三皇五帝」と呼び、チャイナの理想とする王を意味します。

秦の王・政がチャイナ大陸を統一したときに、「三皇五帝」の話を踏まえたうえで王よりも偉いという意味を込めて「皇帝」と称しました。

決して、皇帝=エンペラーではありません。むしろ、まったく違う存在です。皇帝をエンペラーの訳語としたのが、そもそも誤りです。

さて、今度は王です。実は「王」という言葉には異なる2種類の意味があります。1つはチャイナの皇帝との関係での「王」、もう1つは日本語における意味での「王」です。

まずはチャイナの「皇帝」との関係で「王」を押さえます。

始皇帝も、皇帝を名乗る前は王でした。王の上にいる者という意味を込めて皇帝としたわけですから、当然、チャイナの王とは皇帝の下の者のことです。

皇帝との血のつながりはあってもなくても関係ありません。チャイナの王朝では、父である皇帝が息子たちを王として地方を治めさせたり、血のつながりのない有力武将などを王として冊封したりします。

そうした皇帝と王の関係がわかれば、朝鮮国王という存在は中華帝国の有力武将と同じ程度だということがおのずと見えてくるというものです。

次に、日本語における「王」の意味を確認しましょう。

日本語として漢字で「王」と表現した場合には2つの意味があります。1つは先ほど見た、皇帝の下の者というチャイナでの定義と同じ意味です。

もう1つは、覇道(武力による政治)に対する王道(徳による政:まつりごと)、覇者(武力でのしあがった者)に対する王者(徳をもって治める者)、という意味で使われる「王」という意味です。

「王」と表現している場合、どちらの意味なのかが問われます。同じ字を使い、見かけは同じ単語でも、皇帝の下の「王」と覇者に対する「王」とではまったく意味が異なるからです。

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