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【あの著者と、この店で】上海でバイトしてみてわかった!ヤバすぎる日中「労働格差」(後編)

2018年06月01日 公開
2023年04月17日 更新

西谷格(ノンフィクションライター)

 

共同経営者が会社を乗っ取る!?

――中国ビジネスの現状についても少し触れたいと思います。おすすめの一書にセレクトされた『「米中関係」が決める5年後の日本経済』(渡邉哲也著、PHPビジネス新書)にも書いてありましたが、中国ではスマホで決済できる電子マネーがかなり普及しているそうですね。

【西谷】はい。そもそもスマホ(スマートフォン)の普及率が日本の比ではありません。そのうえで、3年ほど前から、最もメジャーな電子マネーのひとつで、中国のテンセントが提供するサービス「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」が、大型チェーン店から個人商店、個人取り引きなどあらゆる決済に使われています。どこでも使えて、利便性も高く、子どもからご高齢の方までみんな使いこなしています。もはや生活必需品ですね。

――日本ではそれほど電子マネーは普及していません。いったい何が違うのか。

【西谷】中国の場合、単純にサービスの広げ方が上手で、とにかく利用者を増やすことを最優先します。たとえば、ウィーチャットペイは利用者の手数料が無料で、店舗側はQRコードさえ作ればすぐに使えるという導入コストの安さが普及を後押ししました。銀行側も新しいテクノロジーを取り入れることに貪欲で、銀行口座があれば簡単にウィーチャットペイと紐付けすることができます。社会全体が日本の数倍のスピードで変化しているので、新しいテクノロジーやサービスを受け入れる土壌は、日本以上にあると感じます。

とはいえ、日本のような慎重さには欠ける面もあります。シェアサイクル(自転車)産業は最初にタダ同然の値段設定でサービスを提供し、爆発的なスピードで利用者を増やしましたが、最近ではビジネスモデルとして行き詰ってきています。マナーの問題も指摘されており、道端にシェア自転車が山積みにされて"墓場"になっているのはご承知の通りです。

――中国ビジネスの功罪を両面から評価する必要がありますね。最後に、中国進出を考えている法人や個人に向けて何かアドバイスはありますか?

【西谷】ひところ日本企業が猫も杓子も中国に進出しましたが、足元をすくわれるケースが目立ちました。先ほど述べたとおり、中国人はビジネスマンというより「商売人」なんです。たとえば、中国で開業するには、営業許可証が必要です。出資者に外国人がいる場合、さらに条件が厳しくなるため、共同経営者として現地の中国人を雇うケースが多いのですが、それが落とし穴なのです。気付いていたら、信頼していたパートナーに会社を乗っ取られたという話はよく聞きます。

また、日本で上手くいったサービスや商品をそのまま中国で展開するのも、避けたほうがいいと思います。とくにアパレルや飲食などは競合も多く、生半可な気持ちでは絶対にうまくいかない。成功している日本企業は、事前調査やヒアリングを念入りに行ない、徹底して現地にアジャストしています。13億人の市場はたしかに魅力として映りますが、「過半数は裕福ではない」という事実も念頭に置くべきでしょう。

ちなみに、最近の上海はかつてのようにビルが次々と建設されるような景気の好調さは感じられません。経済成長が成熟し切ったようにも思えます。

――まさか、経済後退の気配を感じて、日本に戻られたのでは……。

【西谷】いやいや。中国に住み慣れて、このままだと自分が「中国人化」してしまいそうだったので、自主的に「人事異動」したまでです(笑)。今後も興味深いネタがあれば、いつでも中国に潜入したいと思っていますよ。

それにしても、〆の納豆チャーハン、絶品ですね。まさに食の日中交流。ごちそうさまでした!

ふーみん特製「納豆チャーハン」に日中友好のヒントが隠されている!?

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著者紹介

西谷格(にしたにただず)

フリーライター

1981年、神奈川県生まれ。フリーライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした

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価格(税込):880円

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