2018年05月08日 公開
2022年10月27日 更新
中国は、鉄鋼の過剰生産への国際的な批判や、2015年のバブル崩壊の処理の過程で、国際社会に対して大規模な国営企業改革を行なうと表明してきた。そして、経済面を仕切ってきた李克強首相などは、さらなる自由化に向けて、最大限努力するとしてきたわけだ。
李克強首相などが述べてきた国営企業改革は、次のようなものだ。すなわち、国営企業の株式を香港市場などに上場し、外国人投資家や外国人にもそれを開放していく――。この前提と最終的な完全変動相場制への移行を条件に、中国の人民元はIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)入りを認められたのである。
しかし、習近平主席の下で行なわれている国営企業改革は、これと正反対のものである。不採算に陥っている国営企業を他の国営企業に吸収させ、巨大な国営企業をつくるというものであり、同時に必要であれば、不採算に陥った民間企業も国営企業に呑み込ませる算段だ。
ある意味、再共産(社会)主義化を推し進めるものになっている。
そして、この方針は3月11日の全国人民代表大会(全人代)で、「習近平氏の新時代の中国の特色ある社会主義」として憲法にも盛り込まれたのである。これにより、中国が完全に自由化され、自由主義社会の一員に加わるという国際社会の幻想は、完全に崩れ去ったことになる。そして並行して現在、中国は外資や外資系企業に対しても、取締役会の上に共産党支部を置き、中国共産党の支配下で経営を行なうように圧力をかけ始めているわけである。
中国の企業法第19条では、「一企業に正規の共産党党員が3人以上在籍する場合、党支部を設置できる」という条項があるが、これはあくまでもつくる「権利」であり、「義務」ではなかった。しかし、これが現実的な脅威になり始めているのである。
(本記事は、『Voice』2018年6月号、渡邉哲也氏の「日本は衝突の部外者ではない」を一部抜粋、編集したものです)
更新:11月22日 00:05