2018年03月07日 公開
2018年07月09日 更新
中国・北京は2022年の五輪ホストであるにもかかわらず、習近平は平昌五輪の開会式にも閉会式にも出席しなかった。文在寅としては、平昌から北京へ、五輪旗が渡される場面を習近平と並んで見守るという絵面をメディアに載せ、中韓の絆をアピールしたかったところだろう。
だが、三度にわたる文在寅の招待を、中国側はすげなく断った。代わりに開会式によこしたのは、党中央指導部(政治局常務委員会)のなかでは序列7位の最下位である韓正。閉会式に送り込んだのは政治局常務委員でもない副首相(科学技術教育文化担当)の劉延東だ。
この中国の韓国に対する冷ややかな態度の背景について、主に4つの理由が挙げられている。
①THAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備をいまだに撤回できないくせに、金正恩のご機嫌をとり、南北融和ショーの主役顔でいる文在寅のことを習近平は嫌悪しており、彼の要請に応えたくない。
②韓国が安全でない。北朝鮮は日本を百年の敵、中国を1000年の宿敵といって憚らない。韓国には北朝鮮のテロリストが潜んでいるため、習近平が訪韓すれば害をなすかもしれず、そもそも韓国のセキュリティ能力を中国は信用していない。
③習近平は五輪など眼中になく、トランプ大統領のワシントンにおける動向の情報収集に神経を尖らせていた。
④3月早々に憲法が改正され、新たな国務院(内閣)人事が決まる全人代(全国人民代表大会)があり、その準備および権力闘争に忙しく、文在寅と金正恩の政治ショーである五輪の開閉会式に付き合っていられるほど暇じゃない。
(本記事は『Voice』2018年4月号、福島香織氏の「金正恩を焦らせた米中の“戦争準備”」を一部、抜粋したものです。全文は、3月10日発売の4月号をご覧ください)。
更新:11月22日 00:05