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石平&福島香織 習近平による日米分断を出し抜いた安倍外交

2017年12月08日 公開
2024年12月16日 更新

石平(評論家/拓殖大学客員教授),福島香織(ジャーナリスト)

米中「G2」時代をどう生き抜くか

  尖閣諸島に加えて沖縄も狙っている中国に日本はどう対峙するか。安倍晋三首相と習近平主席は2017年11月11日、ベトナムのダナンで首脳会談を行ないました。習近平が、2014年の首脳会談と打って変わって「微笑外交」に舵を切ったのはなぜだと見ていますか。

 福島 トランプ政権の動きが見極めにくいなか、アメリカに大きな影響力をもつ国が日本であることを理解したからでしょう。習政権は過去5年、日米韓の分断を画策してきました。とりわけ日本を孤立させることで、三国間の和を乱すことに取り組んできた。

 しかし日本は孤立するどころか、ますます強固な日米同盟を堅持しています。強いていうなら日韓関係に楔を打ち込んだ面はありますが、もともと日韓は同盟を結んでいない。

 そもそも韓国は国家としての戦略がなく、国際的影響力も乏しい国ですから、中国側に引き寄せたとしても、戦力として期待できません。国際社会との連携を深め、習政権の画策を出し抜いた安倍外交はもっと評価されていいと思います。

 習政権は「G2時代」を宣言しており、これからも最大のライバルはアメリカです。米中対立構造のなかで、1位のアメリカと3位の日本が手を組むなか、2位の中国が日本を引き寄せたがっている。

 権力基盤を固めて一段落した習政権は、1期目で失敗した「日本孤立化戦略」を転換し、日本へ歩み寄る姿勢を見せています。経済を中心に「戦略的互恵関係」を深め、いずれは「一帯一路」に日本を取り込みたいのではないでしょうか。

  習政権は日米同盟への牽制に加え、基本的に日本を敵対国と見なしています。ただ、日本とは経済協力の必要があるから、敵対意識をもちながらも、アジア外交の一環として利用する戦略でしょう。だから習政権が日本に融和的な姿勢を見せたからといって、油断しないほうがよい。

 現に2017年8月24日、中国機のH6爆撃機六機が紀伊半島沖まで飛行しています。「本気になれば大阪を火の海にできる」という、まさに「敵国」に対するような脅しです。日本は日米同盟を基軸に、いかに中国の膨張を食い止めるかを国策の根底に据える必要があるでしょう。

(本記事は『Voice』2018年1月号、石平氏&福島香織氏の「失敗した日米分断」を一部、抜粋したものです。全文は12月9日発売の1月号をご覧ください)

著者紹介

石平(せき・へい)

評論家

1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。近著に、『なぜ中韓はいつまでも日本のようになれないのか』(KADOKAWA)などがある。

福島香織(ふくしま・かおり)

ジャーナリスト

1967年、奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社に入社。2001年、香港支局長として赴任。翌年から08年まで北京にて常駐し、中国総局の記者を務めた。09年からフリー。著書に、『米中の危険なゲームが始まった』(ビジネス社)、『「中国の悪夢」を習近平が準備する』(徳間書店)などがある。


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