2015年04月10日 公開
2023年02月01日 更新
ペリリュー島内の戦跡を散策していたとき、私はある落書きに胸を打たれた。
水際で米軍を迎え撃った高崎歩兵第一五連隊の千明大隊トーチカの中にその落書きがあった。
"GOD BLESS ALL THE BRAVE SOLDIERS"(すべての勇敢な兵士たちに神のご加護あらんことを)
私はいたく感動した。
圧倒的物量を誇る米軍の前に敢然と立ちはだかり、最後まで勇敢に戦った日本軍将兵は実に立派であった。
ペリリュー神社には日本人を驚かせる石碑がある。
それは、敵将・アメリカ太平洋艦隊司令長官C・W・ニミッツ提督から送られた賛辞がそのまま石碑となっているのだ。
"TOURIST FROM EVERY COUNTRY WHO VISIT THIS ISLAND SHOULD BE TOLD HOW COURAGEOUS AND PATRIOTIC WERE THE JAPANESE SOLDIERS WHO ALL DIED DEFENDING THIS ISLAND"
日本語では次のように表記されている。
"諸国から訪れる旅人たちよ、この島を守るために日本軍人がいかに勇敢な愛国心をもって戦い、そして玉砕したかを伝えられよ"
国を守るためにその尊い生命を捧げた軍人に感謝することは世界の常識なのだ。にもかかわらず日本人はそんな当たり前のことすら忘れてしまっている。
ひたすら祖国の平和と弥栄を願い、北の荒野にそして絶海の孤島に散華された先人たちのことを。
パラオでは、現在も日本軍将兵の武勇は地元の人々に語り継がれており、この国を訪れる日本人は、きっとパラオの人々の親日感情や、いまも 残る日本語に驚き、そして感動することだろう。
そして平成27年(2015)4月、天皇皇后両陛下がパラオに御行幸啓される。
このニュースが発表された直後、再びペリリューの英雄・土田喜代一氏の声が電話越しに私の耳朶を打った。
「井上さん、陛下がおいでになるなら、たとえ車椅子になっても、這ってでも、もう一度パラオに参ります!」
背筋の伸びた感極まった声であった。
<著者紹介>
【井上和彦(いのうえ・かずひこ / ジャーナリスト)】
昭和38年(1963)滋賀県生まれ。滋賀県立膳所高校卒業。法政大学社会学部卒業。専門は、軍事・安全保障・外交問題・近現代史。
テレビ番組のコメンテーター・キャスターを務めるほか、書籍・オピニオン誌の執筆を行なう。「たかじんのそこまで言って委員会」(讀賣テレビ)では“軍事漫談家”の異名を持ち、同番組をはじめとして「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「激論!コロシアム」(テレビ愛知)、「かんさい情報ネットten!」(讀賣テレビ)など出演番組多数。また「日本文化チャンネル桜」の「防人の道 今日の自衛隊」のキャスターのほか、航空自衛隊幹部学校講師、東北大学大学院非常勤講師、(公財)国家基本問題研究所客員研究員、民間憲法臨調代表委員、商社シンクタンク部門の主席アナリストも務める。平成25年より「国民の自衛官」(フジサンケイグループ主催、産経新聞社主管、防衛省協力)の選考委員。
著書に、『日本が戦ってくれて感謝しています』(産経新聞出版)、『最後のゼロファイター 本田稔・元海軍少尉「空戦の記録」』『東日本大震災秘録 自衛隊かく闘えり』(以上、双葉社)など多数。
更新:11月22日 00:05