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「右」対「左」の時代は終わる 泉房穂氏と福田充氏が語る日本政治の新しい時代

2026年08月25日 公開

泉房穂(参議院議員、元明石市長),福田充(日本大学危機管理学部教授)

「右」対「左」の時代は終わる 

2026年衆議院議員総選挙で自民党が歴史的な大勝を収め、日本政治は新たな局面を迎えました。
この結果は「右対左」という従来の政治の対立軸が終わりを迎えたことを意味するのでしょうか?
それとも、小選挙区制が生み出した一時的な現象なのでしょうか?

本稿では、参議院議員で元明石市長の泉房穂氏と日本大学教授の福田充氏が対談。総選挙の結果を踏まえ、「国民を向いた政治」という新たな対立軸の可能性や、健全な野党の再建、政権交代が機能する民主主義のあり方について、多角的な視点から日本政治の未来を語り合います。

※本稿は、泉房穂、福田充著『国民のお金はどこに消えた?』(PHP新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「右」対「左」の時代は終わる

【福田】2026年2月の衆議院議員総選挙で、高市早苗首相率いる自民党が単独で総定数の「3分の2」を超える316議席を獲得する圧倒的な勝利を収めました。真冬の2月に総選挙が実施されたのは、奇しくも私と泉さんが出会うきっかけとなった1990年2月の総選挙以来、36年ぶりのことでした。

振り返れば、わずか1年4カ月前の2024年10月に行われた石破茂政権下の総選挙では、自民党は67議席減の191議席と大敗を喫し、連立を組む公明党と合わせても過半数を割り込む少数与党に転落していました。さらに2025年7月の参議院議員選挙でも自民党と公明党は大きく議席を減らし、非改選と合わせて、参議院でも与党は過半数を割り込みました。

そして高市政権発足後の同年10月、公明党は26年間続いた自民党との連立を解消、自民党は新たに日本維新の会と連立を組んだものの、参議院では少数与党の状態が続きます。

こうした流れの中で、政界再編、政権交代が現実味を帯びてきたというのが、高市政権発足前後の政治状況だったと思います。ところが、今年(2026年)2月の総選挙で状況は一変しました。立憲民主党と公明党は「中道改革連合」を立ち上げましたが、2月の総選挙で大敗しました。

高市政権の圧勝と中道リベラルの崩壊を経て、これから本腰を入れて「新しい軸」の構築、健全な野党の育成と政権交代可能な政治システムの構築をいかに進めていくかが、今非常に重要になっていると私は考えています。

なお、日本で「リベラル」というと、どうしても「リベラル左翼」のことと思われがちですが、そうではありません。真の「リベラル」とは何か、その本質についても議論したいと思います。

これまで自民党と対峙してきた野党のリベラル勢力は、失礼な言い方かもしれませんが、ほぼ「焼け野原」になったといえます。そんな中で新しい軸の構築を担えるのは泉さんしかいないと私は考えているのですが、泉さんは2月の総選挙の結果をどのように見ていますか。

【泉】長い目で見たとき、私はこの状況が悪いとは思っていません。福田君は「焼け野原」という言葉を使いましたが、まだ火が収まったわけではないから、しばらくは大変な時期が続くでしょう。しかし極端に前向きな人間としては、一度焼け野原になったほうが、新しい種をまいて、新しい作物をつくれるという意味において、可能性が広がったともいえます。

【福田】なるほど、そのように考えたら前向きになれますね。

【泉】だから、私としてはそんなに悲観していなくて、逆にきれいな更地にしてもらったほうが、新しいものをそのあとにつくるには都合がいいと思っています。

大きな話をすると、戦後、日本で続いてきた「右」対「左」の政治が終わって、私の言葉を使うと「国民を向いた政治」か「企業やこれまでの既得権益者を向いた政治」か、という対抗軸に移っていくでしょう。もう「右・左」の時代は終わると思います。

いわゆる「中道」勢力も基本的には「右・左」を前提にしていて、いくら「真ん中の中道」といっても、「そうはいっても、お前ら左じゃないか」という批判も含めて、「右・左」という概念に乗っかってきたわけです。しかし、この旧来の構図に乗っかっていては、もう多数派にはなれない時代になりました。これに代わる新しいビジョンで再構築すべきです。

その意味で、今回の総選挙で注目されたのが「チームみらい」です。彼らは「右・左」の概念にとらわれないほとんど唯一の政党でした。彼らは「テクノロジーで徹底的に政治をアップデートします」と主張します。「いつまで古い人間に政治を任せているんですか。新しいテクノロジーをもっと活用しましょう」という「右・左」ではないメッセージを受け止めて、「古いよりは新しいほうがいいな」と、チームみらいに票を入れる人が一定数いたわけです。

今回、チームみらいに投票した人の中には、これまで右を支持していた人、左を支持していた人、両方いると思います。では、チームみらいがこれまでの古い政治に代わる一大勢力を形成できるかというと、そう単純にはいえないでしょう。

いずれにせよ、これまでの「右・左」にこだわっていた勢力がいったん、焼け野原になった状況だとはいえると思います。

【福田】確かに「右か左か」という旧来のイデオロギーの対立は、現代社会では無意味になりつつありますね。東西冷戦構造も55年体制も崩壊している政治状況で、すでにマルクス主義も敗北して、「何が右で、何が左か」という基準や対立そのものがわかりにくくなりました。

アメリカの共和党と民主党の対立構造は、「リバタリアン」と「コミュニタリアン」を軸とした政治思想、政治概念を基盤としていますが、それは日本の政党の政治思想には必ずしも合致していません。

日本でいう「保守か、革新か」という軸も、現代では不明確になってきました。私自身、大学生と危機管理学や政治学の研究、教育をしていて、学生たちと議論することが多いですが、新しい政策を提案する与党の自民党のほうが「革新」的で、旧来の主張を繰り返すばかりの立憲民主党や共産党などの野党のほうが「保守」的だと感じている学生がたくさんいる、ということに気づきました。そういう意味では、「保守か革新か」という構造も相対的なもので、絶対的なものではないですね。

私たち研究者や、政治家のほうが、そういう古い対立軸や図式にとらわれすぎないことが大事ですね。

 

圧勝したからといって勝ち続けるとは限らない

【泉】前向きな人間としては、現状を悲観していない理由はまだあります。日本が民主主義の国だからです。独裁国家でもなければ、かつてのような武家社会でもありません。日本には選挙があります。選挙のない国であればいざ知らず、選挙があるんだから、選挙を通して状況を変えることは可能です。どんなに遅くとも、4年以内に総選挙があります。

今回の総選挙で自民党が圧勝しましたが、自民党の小選挙区での得票数は2700万台で、岸田文雄政権の2021年に行われた総選挙とほぼ一緒です。もっといえば、2009年の民主党に政権交代したときの総選挙で自民党が獲得した票ともあまり変わりません。自民党票が大幅に増えたわけではないのです。

それなのに、自民党が今回圧勝できたのは、小選挙区制のなせる業です。野党統一の動きが鈍く、全国289の小選挙区で次々にトップが入れ替わっていったことで、結果的に自民党が圧勝しただけです。その意味では、小選挙区をベースとした日本の選挙制度の特徴がよく表れた選挙だったといえます。小選挙区制というのは、たとえそれぞれの選挙区では僅差であっても、オセロのように全体の景色が一瞬で入れ替わる制度なんです。

さらに言うと、選挙というのは、一度圧勝したからといって、次も勝てる保証はありません。たとえば2005年の郵政選挙、私が落ちた衆院選ですが、このとき自民党は296議席を獲得して大勝しています。

当時はこれがずっと続くかと思われたけれど、その2年後の参院選では与野党が逆転し、2009年の総選挙で今度は民主党が308議席を取って圧勝、政権交代を実現しています。こういうことは選挙制度上、ありうることです。

このときは郵政選挙で圧勝した小泉純一郎首相が2006年に退任すると、そのあと安倍晋三首相、福田康夫首相、麻生太郎首相と1年交代の政権が続き、国民が新しさを求めている状況の中で2009年、政権交代が実現、鳩山由紀夫民主党政権が誕生したわけです。もちろん状況は当時と違いますが、2年半後(2028年)には参院選があり、4年以内に総選挙もあります。理論上、2009年の再来は可能だと思います。

今回の総選挙以前に自民党が衆議院で300議席を超えたのは、1986年の衆参同日選挙1回だけです。これは中曽根康弘首相のいわゆる「死んだふり解散」に伴う総選挙で、追加公認を含めて304議席を獲得しています。しかし、翌87年の統一地方選で自民党は負けています。

このように歴史を振り返ると、今焼け野原だからといって、永遠にそれが続くわけではないことがわかります。ポイントは、新しい勢力をいかにして形成するかというところだと思います。

ちなみに86年の「死んだふり解散」では、中曽根首相が解散は絶対にないと思わせておいて、電撃的に解散に打って出ました。2005年の郵政選挙では、郵政民営化法案が参議院で否決されたから衆議院を解散して国民に信を問うという、誰もが「そんな無茶なことをするはずがない」と思っていた解散を小泉首相が断行しました。結局、過去2回の自民党の大勝は、「不意打ち解散」によって勝ち取ったものなのです。

プロフィール

泉房穂(いずみ・ふさほ)

参議院議員、元明石市長

1963年、兵庫県明石市生まれ。東京大学教育学部卒業後、NHKやテレビ
朝日のディレクター、石井紘基氏秘書、弁護士を経て、2003年、衆議院議
員となり、犯罪被害者等基本法などの立法化に努めた。11年、明石市長に
就任。子ども施策のほか、高齢者・障がい者福祉に尽力。23年4月、任期
満了に伴い市長を退任。25年7月、参議院議員選挙に当選。

福田充(ふくだ・みつる)

日本大学危機管理学部教授(学部長)

1969年、兵庫県西宮市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。現在、日本大学危機管理学部教授(学部長)、同大学院危機管理学研究科教授(研究科長)を務める。専門は危機管理学、リスクコミュニケーション、インテリジェンス、テロ対策、災害対策ほか。
内閣官房や自治体等で危機管理に関する委員や、コロンビア大学客員研究員等を歴任。

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